Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

「これは医学書」


見もしない内から決めつけるのは良くない。


人としても医者としても。


それに瑠璃の周りには医療関係のものが並んでいる。


それを見ればなんとなく予想は出来ると思う。


医術のことを尋ねるのに医者程適した人材は居ない。


「ど、どうしてですか…?」


「わたし医者を目指してるから」


「へ、へぇ…」


「挿管についてだから見ておくと良いかもね」


見て理解出来るなら苦労はないけど。


「神那先生、挿れ方とかはなんとなく分かったんだけど。

ここに合併症になる恐れがあるって書いてあるけど具体的にはどんなのが多いの?

それが分かれば対処法も分かる訳でしょ?

なのにそこまで載ってなくて」


「1番多いのは歯牙損傷。

簡単に説明するとこれは挿管した時に歯を傷つけること。

最悪の場合は折れた歯が気管、食道内に迷入することもある。

主に前歯に多い」


医学書をそのまま暗記したような説明。


「そうなんだ、挿管って難しいんだね」


「けどこれが基本。

挿管が出来なきゃ何も始まらない」


「そっかー」


挿管にも色々な種類があり、それぞれ難度や必要性が違うから様々なものを習得しなくては肝心な時に役に立たない。