「あ、そうだ。

あとで救命患者全員分のカルテ読んで頭に入れておいてね」


その後もずっと立ったまま会話を進める。


「ぜ、全員分ですか?」


「勿論だよ。

救命の患者はいつ誰がどこで急変するか分からないからね。

誰でも速やかに対処出来るように全員分の病状を把握しておく必要があるの」


「全員って…一体何人居るんです?」


出来ることなら聞きたくないけど。


「んー?たった50人だよ」


「ごじゅ…‼︎

たったじゃないですよ、それ」


「何言ってるの。

神那ちゃんはICU、HCU、一般病棟。

全部把握してるよ。

カルテなんて見なくてもすぐに答えられる。

もしかすると投与してる薬とかも覚えてたりするかもね」





【HCU】
準集中治療室。





「す、凄いですね…」


「まぁね、神那ちゃんの記憶力は人間離れしてる部分もあるから。

それが普通だと思っちゃダメなんだけど50人ぐらいは覚えないとね。

いきなり覚えるのは難しいと思うから最初はノートにメモしておくのも良いかもね。

それで時間のある時に読み返して覚える。

それが1番早い方法なんじゃないかな」


「さ、参考になります…」


「神崎先生、今日神那先生は?

来ないの?」


「今はICUの様子見に行ってる。

何もなければもうすぐ来るよ」


「そっか。

早く来ないかなぁ」


「楽しみなの?神那先生が来るのが」


「うん、いつも神那先生に勉強教えて貰ってるんだ」


「そうなんだ」


そんなこともするんだ、神那先生って。