神崎はやっぱり甘いね。


遠回しじゃなくはっきり言えば良い。


君はフライトドクターに向いてない、って。


「それぞれ専門があるけど救命ではそんなの関係ないからね。

まぁ、多少は関係あるけど緊急の時はほとんど無視だね」


組んでいた脚を反対に組み直し、続ける神崎。


専門なんかにこだわってたら助けられない。


「そうなんですか?」


…なんなの?


いちいち反応が大きい。


知らない訳じゃあるまいし。


「うん、一通りの外科の知識はある。

だから簡単な処置なら施せる。

それ以外は専門の先生に任せるか、指示を貰ってオペするか」


「過酷なんですね」


「それが分かってて救命医をしてる」


そんなの全て分かった上でこの道を選んだ。


「一応、救命の先生について話しとくね。

救命は色々な科の先生集まってるんだよ。

脳神経外科の僕、胸腹部外科の神那ちゃん。

産婦人科の恵ちゃん、形成外科の近藤くん」


「外科が多いんですね」


「救命に来るのは外傷患者がほとんどだから。

挿管(ソウカン)、縫合の出来ない医者は要らない」