Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

「に、逃げたって…」


逃げたものは逃げた。


オブラートに包んで言ってあげる必要はない。


「ドクターヘリでは1つのミスも許されない。

限られた時間、限られた機材で瀕死の患者を救う。

1つのミスが患者の死に繋がることだってある。

その重圧に耐えられる精神力、確かな腕を持った者だけがドクターヘリに乗ることを許される」


なんの抑揚もつけずに告げる神那。


「そういうこと。

現に4人居る救命医の中で僕ら2人だけがフライトドクターなの」


それ以外は腕、主に精神力が足りていない。


青島もかつては救命医だった。


ほんの少しの間だけど。


「え、2人だけなんですか?」


「そうだよ、だから日替わりで担当するの。

大災害の時は2人で出る。

これがまた重労働なんだよ、ヘリは日に2回は飛ぶからね」


フライトドクターは人手不足なのにその仕事は過酷。


「嫌なら辞めれば良い。

私は別に1人でも問題ない」


「そんなこと言わないの!

嫌々じゃないから。

それにヘリだけが救命じゃないからね?水原ちゃん」


「え?あ、はい」