ステーションへ戻り、瑠璃のカルテを整理する。


「あれ、水原ちゃんは?

一緒じゃないの?」


「一緒じゃない」


いつもいつも一緒に居るとは限らない。


「どこ行ったん?水原の奴」


「知らない」


私の知ったことじゃないし、知りたいとも思わない。


カルテに黒インクのボールペンを走らせながら答える。


「神那ちゃん、励ましに行かないの?」


「どうして?」


眉間にシワを寄せ、怪訝そうに神崎を見やる。


「そんな怖い顔しないでってば。

僕達外科医と比べて内科医って人の死に触れる機会が少ないから、最初は落ち込んじゃっても仕方ないよ」


「仕方ないじゃ済まされない。

医療関係者しか居なかったから良かったけど、あの場に家族が居たらどうなっていたか想像出来る?

医者が家族の前で取り乱すなんて言語道断。

あってはならないこと」


いくら辛くてもそれを隠さなくてはならない。