そぉっ…、と曇りガラスの扉に手を伸ばす。
…この扉を、開けたら…
全てがわかる………
け………ど………
や、やっぱりダメだ!
私にはハードルが高すぎるっ!
ぱっ!と手を引っ込めて、お風呂場から背を向けた
その時だった。
『…おい。』
「っ!!!」
聞き慣れた低い声が、お風呂場に響き
脱衣所の私の耳へと届いた。
びくん!!と、体が反応する。
いつの間にかシャワーの音が止まっていて、曇りガラスの向こうからレイの声が響く。
『…お前、さっきからそこで何やってんだ?
そこに居られると、落ち着かねぇんだけど』
!!
私の存在に気づかれたーっ!
私は恐る恐る声をかける。
「あ、あの…いつからバレてた…?」
『ルミナが脱衣所に入って来た時から気づいてたけど。』
ホントデスカ?!!!
私は一気に挙動不審になる。
や…やばいよ。
レイにずっと前から気づかれてたなんて…!
すると、曇りガラスの扉に
ひた…、とレイが手をつけた。
どくん…!
私の緊張がピークに達した瞬間
レイの戸惑うような声が聞こえた。
『風呂、入りたい?
…それとも、俺に、なんか言いたいことでもあんの?』
!!
私は、一瞬で頭の中を整理する。
“傷がないか体を見せてください”なんて言えない。
ましてや“お風呂覗こうとしてました”なんてもっと言えない…!!
急に自分が恥ずかしくなる。
わ…私は、何バカなことをしようとしてたんだろう…!!
「レイ、ごめんなさいっ!!!」
私はお風呂場のレイに向かってそう叫び
返事も聞かぬまま、一目散に脱衣所を飛び出した。
『……何しに来たんだ、あいつ…?』
レイが、お風呂場で小さく呟いた。
私は、そんなレイを気にする余裕もなく
頭の中を混乱させながら離れに向かって走る。
…バタン!
自分の部屋へと走り込み、離れの扉を閉めた瞬間
私はその場に、へなへなと座り込んだ。
「…だめだぁ…!もうレイの顔を見れない…!」
真っ赤に染まる顔を手で覆い
私はぎゅっ、とその場に縮こまる。
ボーン、ボーン
遠くから、十二時を知らせる時計台の鐘の音が聞こえ
夜空の月が、優しく部屋を照らしていた。



