その時、ギルが、そっ、と私を抱きしめた。



「…っ」と私の言葉が途切れる。




「ルミナ。」




優しく、甘い声が耳元で聞こえた。




「…確かに、最初はラドリーさんとの約束があったから、君を闇から守ってきた。」



ギルは、一呼吸おいて言葉を続ける。




「でも、今は違う。」







私はギルの言葉を聞き逃さぬように、必死で意識を呼び戻す。



「ラドリーさんに恩返しをしたいってだけで闇喰いをしてるわけじゃない。

今の僕は、約束なんか無くたって、何をしてでも君を守りたいと思うようになった。」




その時、ギルは私を抱きしめる腕に少し力を加えた。


ギルの体温が、服越しに伝わる。



自分の胸が、ドキドキと鳴っているのを感じた時

ギルの切なさと苦しみが混ざり合ったような声が聞こえた。




「僕に近づいて欲しくないって思ってた。

お互いを知りすぎたら、ルミナを傷つけることになるってことをわかっているから。」




心の中に溢れた想いをぶつけるかのように

ギルは熱を帯びた少し掠れた声で囁いた。




「でも…時々こうやって…

君を抱きしめたくてしょうがなくなるんだ」




…!



その時、至近距離でギルの顔が見えた。



どくん…!



胸が大きく音を立てる。



私は、彼の姿に目が離せない。



長い黄金の髪が、だんだん短くなり、色を無くしていく。



魔力を失い、徐々にギルの姿が変わっていく様子に、私は言葉を失った。



だんだん遠のいていく意識の中

私の目にそこにいるはずのない人物が見えた。



私は、無意識のうちに“彼”の名前を口にする。




「…レ……イ……?」




「!!!」





その瞬間

私の意識は、プツ、と途切れた。