《ロディside》



タッタッタッ…



嬢ちゃんと別れ、ひたすら廊下を走る。




『!コイツ、ギルの右腕の“黒き狼”だ!』


『この男を捕らえて、シンの娘の居場所を吐かせろ!』



携帯を気にして走りつつ

襲いかかってくる闇たちの“ゴミ掃除”も忘れない。



ドッ!ガッ!!



『ぐはっ!!』



倒れこむ黒マントの男たちを踏みつけ、俺は慣れた手つきで“あの男”へと電話をかけた



プルルルル……

プルルルル……



二コール目で、プツ、という音がスピーカー越しに聞こえた。



「レイ、聞こえるか。

今ドコにいる?」



俺が早口でそう言うと

電話の向こうから気だるげな声が聞こえた。



『あー?酒場だよ。…お前はどーせ、ルミナと楽しく食事してんだろ?

俺、結構寂しいんだけど。今、一人でココアをジョッキで……』



俺は語りだしそうなレイの言葉を遮って言い放った。



「いじけてる場合じゃないぞ、レイ。

パーティ会場に“ダウト”が現れた。」



『はぁっ?!』



俺の言葉に、つい電話を離してしまうほどのレイの大声が聞こえた。


一気に真剣な声になったレイが、俺に向かって尋ねる。



『屋敷に闇は入れないんじゃなかったのかよ?』



俺は、迫り来る黒マントを相棒のパソコンと足蹴りで床に転がしながら答えた。



「俺にもよく分からないんだが、“警備装置”に何か問題があって電磁波が消えたのかもしれない。

今ならお前も入れるはずだ、早く来い!」



すると、ガタン、という音ともに

戦闘状態のレイの声が聞こえた。



『…今すぐ“瞬間移動魔法”でそっちに行く。

ルミナはそこにいるか?』



「いや、闇と戦う俺の近くに置くのは逆に危険だと思って、シルバーナさんに頼んだ。

この屋敷には隠し通路から行ける地下室があるらしい。二人はそこに向かった。」



と、俺が答えたその時。

ヒュン…、と風を切るような音がスピーカー越しに聞こえた。


そして、屋敷の外の騒音が聞こえる。



…“瞬間移動魔法”って、本当に便利だな。

もう外に着いたのか?



俺が感心していると、動揺したようなレイの声が聞こえた。



『おい、ロディ!電磁波放たれたまんまだぞ!

会場に入るどころか、近づけねぇ!』





なんだって……?




俺は廊下を走りながら、眉を寄せて考え込んだ。



…おかしい。

電磁波が放たれたままなら、なぜダウトは入って来れたんだ?



どこかに“スキマ”があるのか…?



いや、シルバーナさんの話では“警備装置”は財力と技術を結集させた最新鋭の機械のはずだ。

不備があるとは思えないが…。