確かに、会場に入る前
シルバーナさんはそんなことを言っていた。
「あれ?ロディ、シルバーナさんと一緒じゃなかったの?」
「あぁ…。
彼女はメガネにタキシードの執事っぽい男に呼ばれて、途中で別れたんだ。」
“メガネにタキシード”?
ルオンを呼びに来た男性の姿が頭に蘇る。
…“ラルフ”と呼ばれてたあの人も、確か“メガネにタキシード”だったような?
ルオンは自分のことを、御曹司じゃないって言ってたけど
“ルオン様”なんて呼ばれてたよね。
…一体、何者なんだろう?
私がまつ毛を伏せて考え込んだ
その時だった。
ガシャーンッ!!
「「!!」」
突然、一階のフロアから大きな音が聞こえた。
私とロディは一斉に手すりから身を乗り出しらせん階段の下を見る。
そこには、ドレスやスーツを着た参加者たちが、慌てふためいて走り回っているのが見えた。
な…何が起こったの?!
驚いて動揺していると、ロディが冷静な声で私に言った。
「とりあえず状況把握だ、下に行こう。
…嬢ちゃん、俺から離れるなよ。」
私は、力強くロディの言葉に頷くと
ロディを追いかけるように、らせん階段を駆け下りた。
****
「…!!」
ロディと共に一階へと下りてきた私は
目の前に広がる光景に体が震えた。
そこには、会場の整備員と戦闘する黒マントの集団の姿。
あらゆる場所で攻撃魔法が飛び交い、怪我をしている警備員もいる。
…あれは、“闇”?!
どうして…?
ここには闇は入って来れないはずなのに…!
パーティの参加者たちは、誘導されながら会場の外へと逃げていく。
すると、絶句している私とロディの元に、落ち着きを失ったシルバーナさんが駆け寄ってきた。
「ルミナさん方、お怪我はありませんか!」
ひどく取り乱した様子のシルバーナさんに、ロディが冷静な声で尋ねる。
「俺たちは大丈夫だが、一体何が起こったんだ?
この屋敷は、闇避けの電磁波で囲まれてるはずだろ?」
どうして闇が、と言う前に
シルバーナさんは早口で答えた。
「実は、私にも何が何だか分からないんですの。急に会場に闇が押し寄せて…。
もしかしたら、“警備装置”の故障かもしれませんわ…!」
“警備装置の故障”…?!