翌日。

綺麗な青空が広がる昼下がり。私は一人、サンクヘレナの街を歩いていた。


昨日の出来事が、頭から離れない。


黄金の髪の毛に、薔薇色の瞳の青年の姿が頭に蘇る。

ギルという名しか手がかりがないけど、もう一度彼と話がしたい。彼のことをもっと聞いておくべきだった。


どうして私を助けてくれたのか、どうして私の名前を知っていたのか…、聞きたいことは山ほどある。

忘れろと言われたけれど、そんなことできるはずがない。

もう一度会って、ちゃんとお礼を言わなくちゃ。


それに、父の遺したシンという闇魔法のことも、闇喰いのギルなら詳しく知っているかもしれない。


でも…一体、どうやって彼に会えばいいんだろう?


私が頭を悩ませながら歩き、一軒の花屋の前を通りかかった時、ちょうど花屋の前で話し込む男性たちの声が聞こえてきた。


「最近、いろいろな場所で闇が好き勝手に暴れているみたいだな」

「あぁ。どうやら闇達の中には、大きな組織を作って活動してる奴らもいるらしいぞ」


大きな組織…?


私は、ふと足を止める。

そういえば、昨日私を襲った闇も上下関係があるみたいだった。


リオネロ達も、組織の一員なのかな…?


男性達は話を続ける。


「はぁー。この街の治安はタリズマンが守ってくれているとはいえ、いつ襲われるか分からないのは心配だよなぁ」

「せめて、闇達の詳しい情報が分かればいいんだけど…」


その時、男性の一人が、はっ!としたように顔を上げた。


「そういえば、あくまで噂なんだが…この街には、調べられないものはないという凄腕の情報屋がいるらしいんだ」

「あぁ!“黒き狼”だろ?奴に依頼すれば、闇の情報なんてすぐに手に入るだろうな」