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「ロディ、これすごく美味しいよ…!」



「…ん。本当だ、美味いな。

今度酒場のつまみに取り入れるよう、レイに言っておくか。」




パーティ会場に入ってから三十分。

私はロディと一緒に、大きなテーブルにバイキング形式で並べられた食事を口に運ぶ。



どれも豪華で、新鮮なものばかり。

お腹空かせてきて正解だったなぁ…!



…レイも食べられれば良かったのに…。



ふと、レイのことを考えると

ロディが私の心を見透かしたように笑って言った。



「レイの分も貰えるか、後でシルバーナさんに聞いてみるか。」



…!

私は笑顔で頷く。


会場では食べられなくても、テイクアウト出来るなら持って帰りたいな。


…それにしても、何の用事なんだろう?


“急用”って言って、パーティ放り出してモートンのところに行くなんて

そんなに大事な用事なのかな?



その時

客人に挨拶をして回っていたシルバーナさんが私たちの方へと歩いてきた。



彼女のにこやかな笑みに、私もつられて笑顔になる。



「食事は口に合いますか?」


「はい!…すごく美味しいです…!」



シルバーナさんは私とロディの反応を見て、嬉しそうに笑った。

私がテイクアウトのことを聞くと、シルバーナさんは喜んで頷く。



…良かった。

せめてものドレスのお礼として、帰ったら、レイに一番に食べてもらおう。



その時

カチャ…、とフォークを皿に置いたロディがシルバーナさんを見て口を開いた。



「…それで…さっきから会場を見渡しているんだが、写真の彼氏が見当たらないんだ。

どこにいるか、心当たりはないか?」








ロディの言葉に、私も、はっ!とする。



…いけない。

食事に夢中で、本来の目的をすっかり忘れるところだった。



ごくり、と喉を鳴らしてシルバーナさんを見つめると、彼女は困惑したような顔で答えた。



「彼はお忍びで来ていますので、目立って歩き回ったりはしていないはずですわ。

…喫煙所とか、ベランダに出ているかもしれません。」



そっか…。


シルバーナさんの言葉を聞いて、私は改めて考える。



偽ギルは、シルバーナさんのお父さんの知り合いではない。

私たちもシルバーナさんに招かれたけど、偽ギルはシルバーナさんの“彼氏”だ。



もしシルバーナさんの家族に見つかってしまったら

跡取りに相応しい人物なのか、厳しい目で見られるに決まってる。



…偽ギルは嘘をついているし、ギルのフリをしているのなら

なおさらパーティでウロウロ出来ないよね。