《レイside》



ホー…ホー…

フクロウの鳴き声が響く樹海。



心もとない月明かりに照らされた、ログハウスが目の前に現れる。



シュン……!



厳重に張り巡らされた“闇避けの魔方陣”を一瞬で消し去る。



いつもなら無駄な魔力の消費を避けて、魔方陣の合間を縫ってログハウスへと近づくが

今日はそんなことを言っている場合ではない



木でできた扉の前に立ち、ドンドン!と扉を叩いて声をかける。



「おーい、モートン。レイだ。

急用があるから、鍵開けろ!」



予想通り、しーん、として

中にいるはずのモートンが動く気配がない。



…あの野郎……

また研究か?それか寝てるのか?



俺は白衣のもふもふ男の顔が頭に浮かんで、イラッ!ときた。



ドンッ!と強く扉を叩いて叫ぶ。



「モートン!居留守使ってんじゃねぇ!

五秒以内に出て来ねぇと、庭の薬草全部引っこ抜くぞ!!」



「わーっ!レイ君、やめてくださいよ…っ!

庭の植物は全部貴重な実験材料なんですから…っ!」



案の定、すぐに出てきたモートンを見て

俺はギロリ、と彼を睨む。



「今すぐ、闇避けの電磁波を通り抜けられるようになる薬をくれ。

それか、数分だけ魔力を消す薬でもいい。」



俺の言葉に、モートンは少し焦ったように声を上げる。



「む、無茶言わないでください。そんな薬はないですよ。」



「じゃあ、今すぐ作れ。」



俺の言葉に、モートンは明らかに嫌そうな顔をした。



…顔が半分前髪で隠れてるからって、俺には分かるんだよ

お前が“面倒くさい”って思ったことくらい。



…事態は緊急を要するんだ。


偽ギルをどうこう言う前に、ルミナの側に居られないなんて、最悪だ。



…今日のルミナは直視出来ないくらい可愛いからな。

変な男が寄ってくるに決まってる。



ロディだけに任せておけるか…!



モートンは、俺を見ながらゆっくりと腕組みをする。



「…今から一応作ってあげますけど、たぶん一日かかります。

ココアでも飲んで、待っててください。」