その時

私は、屋敷を取り囲むように立っている人々に気がついた。



「あの人たちは、“警備員さん”ですか?」



私の問いかけに、シルバーナさんは微笑んで答える。



「えぇ。我が家専属の警備員ですわ。

タリズマンに頼むよりも、安く済んで安全ですの。」



へぇ……

さすが、お金持ちのお家は違うなぁ…。


専属の警備員さんがいるんだ?



すると、シルバーナさんはさらに言葉を続ける。



「…それに、この屋敷にはもっとすごい“警備装置”がありますから、セキュリティは万全ですわ。」



“警備装置”……?


少し雰囲気の変わったシルバーナさんの背中を見つめていると

やがて大きな門の前へとたどり着いた。



シルバーナさんは、すっ、と門をくぐり抜ける。



私たちも、彼女に続いて門をくぐろうとした

その時だった。




「…っ!」




先頭を歩いていたレイが、門に足を踏み入れた瞬間、ぱっ!と反射的に体を引いた。



…え?



「レイ、どうしたの?」



私が小さく尋ねると、レイは先ほどまでとは違う真剣な瞳で、驚いたような顔をしている。



そして、レイがシルバーナさんに向かって口を開いた。



「…この屋敷の周りに、“闇避けの魔方陣”を張っているのか…?」



……!

“闇避けの魔方陣”……?!



私とロディが驚いて目を見開くと

シルバーナさんは、にこり、と微笑んで答えた。



「これは魔方陣ではなく、我が家が独自に開発した“警備装置”から放たれる電磁波ですわ。

大事なパーティが闇に襲われたら大変ですから、闇の魔力を持つ者は中に入れないようになっているんですの。」





どくん…!


心臓が鈍く音を立てた。



まさか、これがさっきシルバーナさんが言っていた“もっとすごい警備装置”…?



私は、ロディに向かって小声で言った。



「ロディ、どうしよう…!

私、パーティ会場に入れないかも…!」



私の体には最強の闇魔法、シンの魔力が宿ってる。



モートンのログハウスのような闇避けの魔方陣がこの屋敷にもあるなら

私は門から一歩も踏み出せない…!