私が、きょとん、としていると
レイは私の方を見ずに、ぶっきらぼうな声で言った。
「…ん、開けてみろ。
これ、ルミナのもんだから。」
え…?
私は、おずおずと立ち上がってレイから白い箱を受け取る。
サイズは少し大きくて、思ったよりも軽い。
…?
なんだろう?
緊張しながら箱を開けると、白くて薄い紙で包まれた“ピンク色の生地”が目に入った。
…!
こ…これって…………。
ドキドキしてその生地を手に取り広げると
それは可愛くて少し大人っぽいドレスだった。
!!
驚きのあまり、言葉を失う。
目をぱちぱちさせていると
レイがちら、と反応を伺うかのように
私を見ながら口を開いた。
「…来週、社交パーティに行くだろ?
ルミナ、ドレスとか持ってないと思ってさ」
…!
もしかして…
今日、酒場をお休みにして、わざわざ買ってきてくれたの…?
きゅうっ、と胸が締め付けられたような気がした。
私は、改めてドレスに視線を移す。
肩がふんわりと薄い生地で包まれていて、裾がフリルになっている。
細かく、繊細な刺繍が施されていて、触り心地もいい。
私は、目を輝かせながらレイを見上げて言った。
「ありがとう、すごく嬉しい…!
で…でも、こんな可愛いドレス、私に似合うかな…。」
つい、不安げにそう呟くと、レイは私をまっすぐ見つめた。
とくん…!
レイの優しげな瞳に、胸が鳴る。
レイは、視線を逸らさずに
どこか甘い声で小さく答えた。
「…似合うに決まってんだろ。
俺がお前のために選んだドレスなんだから」
……!
どきん…!
さっきよりも大きく、胸が音を立てた。
なんだか、レイが別人みたい。
こんな優しい声、聞いたことない。
そう、まるで………
“ギルみたいな口調”…………。
そこまで考えて、はっ!とする。
わ…私、何考えてんだろう。
レイとギルは、別人なのに。
私はドレスを丁寧に箱にしまって
動揺を隠すようにレイに言った。
「本当にありがとう…っ!
でも、こんなに高そうなドレスをもらうなんて、申し訳ないよ……」
と、その時
優しげな瞳をしていたレイの顔が急に元のポーカーフェイスに戻った。
「…は?誰が“無料でやる”なんて言った?」
「…え…!?」
私がつい、上ずった声を上げると
レイは無愛想な顔で、さらり、と言葉を続けた。
「ドレスも、家具も、この部屋の家賃も、ちゃんと支払ってもらうからな。
…明日から、仕事の量、倍にするから。」
…っ!
な……………っ!
天国から地獄へと突き落とされる。
「い…今までの分、すべて“借金”ってこと?!」
「…当たり前だろ。
俺はお前の彼氏じゃねぇから。なんでも欲しいもん買ってやる義理はないだろ。」