反射的に口から出た言葉に後悔する。


しかし、今さら誤魔化すわけにもいかず、私はレイに向かって握力グリップを見せながら言葉を続けた。



「ギルに助けてもらってばかりだから…

少しでも闇に抵抗できる力をつけようと……思っ……て…」



自分で言っていて、急に恥ずかしくなる。


だんだん小さくなる声を、レイは無言で聞いていた。



レイのことだ。

“…何言ってんだよ。”と、馬鹿にするに決まってる。



するとレイが急に、ぱっ、と顔を伏せた。



…馬鹿にするよりも、呆れられたかな…?



私がちらちらとレイを見ていると

レイは口元を押さえ、堪えきれなくなったように吹き出した。




「────ふっ。」




……!



レイから小さく漏れた笑い声に、私は驚いて顔を上げる。



レイは小刻みに肩を震わせながら、うつむいていたが、ふいに顔を上げて私と視線が重なった。







想像していたどの反応とも違う、優しさを帯びた瞳が私をとらえた。




「…ったく、お前は…!握力グリップごときで闇に勝てるようになるわけねぇだろ…!

…ふ…ははっ!本当、単純だな。」







それは、今まで見てきたレイとは全くの別人だった。


聞いたこともない、柔らかく、優しい声。


その瞬間

私はレイから目が離せなくなる。



私は、ぽつり、と無意識に呟いた。




「笑った……の……初めて見た…。」



「!」




すると

私の言葉を聞いたレイが、はっ!とした。



それを見て、私はもう少しだけ顔を見たくてレイに近づく。




顔を背けたレイは

耳を少し赤くしながら小さく答えた。




「そ…そりゃ、人なら誰だって笑うだろ。」



「いや、レイはずっと私の前では“ムッ”と
してたから……!」



私の言葉に、レイは顔を腕で隠すが

照れたように赤く染まった頬が見えている。




…こんな顔で、笑うんだ。



いつも無愛想なポーカーフェイスをしていたレイの笑顔は、想像していたよりも幼くて

……少し可愛い。



私は、興味津々にレイを見つめながら口を開く。



「あの…もう一回笑ってくれたりする…?」



「ヤダよ、断る。

…あ…あんま見んな。」



いつものムッ、とした表情に戻ってしまったレイを少しだけ残念に思いながら

私は彼に尋ねた。



「それで…どうして離れに?

何か私に用事?それとも、仕事?」



今日は、酒場はお休みなんだよね?



すると、レイは私に向かって

足元に置いていた白い箱を差し出した。



…?