すると、少しの沈黙の後

ロディは、小さく不敵な笑みを浮かべて口を開いた。



「…金持ちの御曹司たちが“悪い男枠”に当てはまるなら、お前だって当てはまるだろ?」



…?



俺が首を傾げると

ロディは俺を見ながら、ぼそっと呟いた。




「…………“溺愛オオカミ枠”。」



「ねぇよ、そんな枠!!!」




ロディの爆弾発言に、俺は、かぁっ!と顔が赤くなる。



な…何言ってんだ、コイツ…。



クスクス、と笑い出すロディに

俺はとっさに取り乱して答えた。




「“オオカミ”は認めるけど、でっ…“溺愛”は認めねぇよ。

別に好きとかじゃねぇし…っ!本当に、俺はそんなんじゃ………」



「はいはい。本心は、よーくわかった。

そういうことにしといてやるよ。」




このやろ……。

俺をからかってやがる…!



俺は、ぎろ!とロディを睨んだが、ロディはしれっ、と俺の威圧するような視線を受け流して言葉を続けた。




「まぁ、お前には“嬢ちゃんとの壁”があるもんな。

言えないことだってあるし……。」




…!

…そう…だよな…。



俺は目を見開いて短く息を吸い込んだ。



そして

ロディの言葉に続いて独り言のように、
ぽつり、と呟く。




「い…言えるかよ…。

“今すぐ全部俺のもんにしたい”だなんて…」




「は…?」




え…?



ロディの反応に、ピタ、と動きを止めて
まばたきをすると

ロディは目を細めて、軽蔑するような視線を俺に向けて言った。




「俺が言えないって言った意味は“お前がギルだ”ってことだよ。

…レイ、お前いつもそんなこと考えてんの?」



「…!!!」




その時、店の奥からギシギシ、と廊下の軋む音が聞こえてきた。




《レイside終》



****



私は、ひょっこりと酒場の奥から顔を出した。



「?二人して、なんの話をしてるの?」



「「!!」」



私が声をかけた瞬間

レイとロディは珍しく、びくっ!と小さく震えて動揺したように私を見た。



…え、え?

急に話しかけたのがいけなかったのかな?



しかし、レイは、すっ、とポーカーフェイスに戻り、私に向かって声をかけた。



「…そろそろ酒場の開店準備をするから、お前は離れに戻ってろ。」


「え…?まだ昼間だよ?」


「い、いいから戻ってろって……」



私に歩み寄ろうとしたレイが、ガツン!と、カウンターの角に足をぶつける。


一瞬、顔を歪めるレイ。



「レイ、大丈夫…?!」



「き…気にすんな…。ルミナはパーティの為に離れでダンスの練習でもしてろ。」






ダンス…?!



たじろぐ私に、レイは何事もなかったかのようにカウンターへと入ってきて

無言でグラスを拭き始めた。



ロディは私に背を向けているが

笑っているのか、肩が小刻みに震えている。



…二人して、どうしたんだろう…?



私は、あらゆる疑問が頭に浮かんだが、レイが“話しかけるなオーラ”を出していたので

その後、言われるがままに離れへと向かったのだった。