言葉の出ない私に微かに笑みを見せると、彼は黒マントの集団に向かって鋭い視線を向けた。


と、次の瞬間。カッ!と見開かれた薔薇色の瞳が闇を捉える。

そして闇たちがビクッ!と体を震わせたと思うと次々と叫び声をあげながら消えていく。


『ぎゃぁぁあっ!』


とっさのことに、何が起こっているのか分からなかった。

しかし、青年の魔力に巻き込まれ、人が目の前で消えていく光景は現実だ。


まさか私を抱きとめているこの人が、闇の奴らを消している!?

この人も相手の命を奪う“闇の魔法”を使う悪い人なの………?


しかし、冷酷な行動とは裏腹に、私を抱きかかえる腕は優しく温かい。


“僕のルミナに何をやっている”


数分前の青年の言葉が頭の中に響く。


この人は、私の味方…?


会ったことのある人ではないと思うけど、どこか懐かしい。


その時。ギリッと悔しそうに歯ぎしりをしたリオネロが私たちを睨みながら叫んだ。


『お、おのれ、闇喰いめ……!覚えていろ!次は必ず、シンのありかを突き止めてやるからな…!』


リオネロはそう言い残すと、黒いマントをひるがえし、夜の街へと消えていった。


ふっ、と体の力が抜ける。

辺りに立ち込めていた魔力が一瞬で消え去った。


すると青年は、ふわりと私を抱きかかえたまま地面へと降り立った。

彼の黄金の髪の毛が月に照らされている。


この人は、闇…じゃなくて“闇喰い”……?