と、それを聞いたロディが

くるり、と私の方を見て言った。



「そういえば、一人暮らしを始めてから二年間、よくバイトだけで生活出来たな?」



私は、ロディを見ながら答える。



「実は、お父さんの知り合いの方が、毎月食材を少しずつ送ってくれてたの。

何度かお礼をしようと思って、伝票に書いてあった住所を訪ねたんだけど、毎回会えなくて…」



そのことを話しながら、ふと、私は考える。



…今考えてみれば、お父さんの知り合いの人は、みんな研究所の人のはずだ。

なのに、伝票に書いてあった名前は研究所の人ではなかった。


それに、二年間も私に食材を送ってくれるなんて、ただの知り合いがしてくれるものとは思えない。



私は、ぽつり、と呟いた。



「もしかしたら……ギルが送ってくれていたのかもしれない…!」



すると、ロディが、ちらり、とレイを見て
ぼそ、と呟いた。




「“…ごん、お前だったのか…!”」



「誰が銀パのごんぎつねだ、ボケ。」




…?


くっ、と笑い出すロディに、レイが、じろりと視線を向けている。



状況が読めず、ぱちぱちとまばたきをしていると

キィ…、と酒場の扉が開く音がした。



ぱっ!と一斉に扉へと視線を向けると

そこには思いもよらぬ二人組が立っていた。




「よーお、レイ!調子はどうだ?

今夜も酒を飲みにくるからな!いいやつを頼むぞ!」


「ガロア警部、今夜は本部で残業です。

溜まった書類を早く片付けてください。」




!!


ガタイの良い短髪の男性と、長い髪に細身の女性。


そして、見覚えのある白いマント。



…この人たちは、タリズマンの…!



私は、レイに親しげに声をかける男性を見つめる。



なんか、イメージと違うな…。

タリズマンって、もっと怖い感じの人だと思ってたけど…。



私が、じっ、と見つめていると

大柄な男性が、ぱっ、と、私を見た。




「ん…?この娘は……。」




びくっ!

反射的に体が震えた。


と、その時

大柄な男性は、にっこりと笑って私に歩み寄って言った。



「あんたは、この前偶然ギルに絡まれた不幸なお嬢さんじゃないか!

ルミナさん…と言ったか?まさか、また会うとはな!」



え…?

私が驚いて、何を言って良いのかわからずにいると、長い髪の女性が男性と私の間に入って口を開いた。



「ガロア警部、彼女が怯えています。

人との心の距離感をすぐゼロにする癖をなおしてください。」




女性は、キリッとした綺麗な瞳を私に向けて言葉を続けた。



「急にすみません。私はタリズマンのミラ。この男は上司のガロアです。

…少し、お話よろしいですか?」