私は、急いでレイの後を追い、レイの入った部屋へと向かう。
な…なんで逃げるの…?
そんなに慌てて………。
その時、慌てたレイが廊下に残した“上着”が私の目に止まった。
…!
その瞬間
私は体が魔法で動かせなくなったかのように呼吸さえも忘れる衝撃を受けた。
「これ………“外套”…?」
それは、見覚えのある外套だった。
胸のあたりがひどく切り裂かれていて、大きな血の染みが所々についている。
どくん…!
全身が震えて、心臓が大きく音を立てた。
これは……
“ギル”の………?
その時、今までの記憶が頭の中に流れ込む。
レイもギルも、ロディと親しく、酒場にも関わりがあるようだった。
モートンとも知り合いで、長年の付き合い。
そして、二人とも私のお父さんの知り合いだ。
…そして、この外套。
ギルの外套のはずなのに…どうしてレイが持っていたの?
ギルは瀕死の重傷を負って、モートンの元へと向かったはずだ。
私は、その瞬間
頭の中にある一つの“問い”が浮かんだ。
私は、外套を手にしたまま、レイの入った部屋の前へと歩く。
そして、動揺を悟られないようにして、部屋の向こうにいるレイへと声をかけた。
「……レイ……。」
私が、すっ、とドアノブへ手を伸ばした
その時だった。
「入るな!!」
!!
びくっ!と体が震えた。
ぱっ!とドアノブから手を離す。
どくん、どくん、と心臓が音を立てた。
私は、ごくり、と喉を鳴らして
レイへ再び声をかける。
「さ…酒場に勝手に入って、ごめんなさい。
…部屋には入らないから…、話を聞いて欲しいの…!」
レイは、何も答えない。
私は、覚悟を決めて、扉の向こうへと震える声で問いかけた。
「あなたが……“ギル”なの…?」
「…!」
その瞬間。
全てのものが止まった気がした。
雲も、風も、時さえも。
冷や汗とは違う汗が、じわじわと、私の体を熱くする。
いろいろな気持ちが渦巻いて、どうしても平静を装えなかった。
沈黙の中
扉越しに、レイの低い声が聞こえた。
「…んなわけねぇだろ、バーカ。」
…!
私はその時、なぜだかその答えがすんなり胸に入って来なかった。
想像していた“否定”だったはずなのに。
レイの沈黙に、何か意味があるように感じてしまったんだ。



