闇喰いに魔法のキス





「レイ……?奥にいる…?

いたら返事をして…!」



声をかけながら、ゆっくりと酒場の中へと入っていくが、返事が聞こえる様子はない。



…本当に誰もいない。



その時、私は、はっ!と思い出した。



そういえば、レイは友達と会っているんだ。



壁にかかっている時計を見ると

針は午後十一時を指している。



…まだ帰って来てないのかな…?



私は、カウンターへと腰をかけた。

座った瞬間、どっ、と疲れが押し寄せる。


頭の中は、ギルのことでいっぱいだ。



…神様…



どうか………

どうか、ギルのことを助けてください。



私は、ぎゅっ!と目を閉じてカウンターに置いた腕に顔を埋める。



カチ…コチ…、と静かな酒場に時を刻む針の音が響いていた。



****



「ん………。」



ふっ、と目を開けると、窓の外はまだ薄暗かった。







ばっ!と体を起こすと、全身が固く、痛みを感じる。



私、いつの間にか寝ちゃってた…!



急いで時計を見ると、針は午前二時を指している。



うそ…!もうこんな時間…?!



トッ、とカウンターの椅子から降りて、酒場の奥を覗く。



レイ…もう帰って来たのかな…?



キョロキョロしながら窓の外を覗いたりしていると

ガチャ…、と店の奥から小さな音が聞こえた。







…レイ…?



私は、頭にピン!と考えが浮かぶ。



酒場の裏には、“離れ”があるんだよね?

レイは、裏口から帰って来たの…?



「……レイ?」



私が酒場の奥に向かって声をかけた

その時だった。



「っ!」



私の声を聞いた途端、小さく息を吸い込むような声が聞こえ

酒場の二階へと階段を上る足音が、タンタンタン!と速くなる。



え…?

れ…レイ?



私は、急いで酒場の奥へと続く廊下へと向かう。


その先に、慌てて階段を上っていく後ろ姿が見えた。



「レイ!待って!!」



ギシギシ、とレイを追いかけるように階段を上ると、レイは私から逃げるように奥へと向かう。


その時

レイの羽織っていた“上着”が、ばさり、と肩から滑り落ちた。


しかし、レイはそのまま二階の奥の部屋に駆け込み、バタン!と扉を閉めた。