リオネロの突き出した腕から、私たちに向かって鋭い漆黒の矢が放たれた。



…っ!!



当たると思った瞬間、ギルが私を抱き抱えて空中へと舞い上がった。


その流れるような動きに、私はただギルに体を預けることしか出来ない。



ギルは、少し離れた木陰に舞い降りると

私を優しく地面に降ろし、ぽん、と頭を撫でた。


そして、そのままリオネロの元へと戻っていく。



…危険がない場所に私を連れて来てくれたんだ…。



私は、ギルの背中を見つめながら心の中で強く願う。



…どうか……

どうか、ギルが怪我をしませんように…!



その時、リオネロが再びギル目がけて漆黒の矢を放出させた。


ギルは、ひらり、と華麗に矢を避けていく。


まるで、攻撃の流れを先読みするかのように紙一重でかわす姿からは、闇との戦いに慣れている印象を受ける。



…やっぱり、ギルはただ強い魔力を持っているだけではない。

身体能力も普通の魔法使いと比べて桁外れに高いんだ。


もしかしたら、タリズマンにも劣らないかもしれない。



『くっ…!ちょろちょろしやがって…!

これでどうだ…!!』



リオネロは、さらにパァッ!と魔力を放出させ、今までで一番大きな矢を作り出した。


ドッ!!とギルへと一直線に放出された矢は先ほどの攻撃よりもずっと速い。


ギルは、避ける余裕がない。



「っ!ギル、危ない!」



私が身を乗り出して叫んだ

次の瞬間。


ギルは、自身に向かってくる矢へと真っ直ぐ腕を突き出した。



パァン!!



それと同時にギルの前に光の壁が現れて、リオネロの矢を弾き返す。







私がその光景に目を見開いた時。


弾き返された漆黒の矢が、地面に降りていたリオネロに向かって飛んでいった。



ドォォオン!!



「っ!!」



漆黒の矢が地面に突き刺さると同時に

辺りに砂ぼこりと衝撃波が広がる。


とっさに目をつぶって、腕で顔を覆った。



…気を抜いたら、飛ばされそう…っ!



必死にその場で突風に耐え、ゆっくり目を開ける。


するとそこには、地面に片膝をついたリオネロと、外套をなびかせ傷一つなく立っているギルの姿があった。



…決着が…着いた…?

…ギルは怪我してないみたい。



私は、ほっ、と胸をなでおろす。