低いエンジン音を響かせながら、私たちを乗せた赤い車は夜に包まれた森を走る。

ギルと私から全ての事情を聞いたロディは、ふぅ、と息を吐いて私に言った。


「嬢ちゃん、レイのためとはいえ、もうこんな危ないことはするなよ。…いつでも俺たちが助けに来れるわけじゃないんだ」

「ご…ごめんなさい」


私は、頭を下げながらロディに答える。


…そうだ。

もし、あの場所にギルではなく魔法の使えないレイがいたなら、私は闇に捕まっていたかもしれない。

今だって、闇やタリズマンが追いかけてくるかもしれないし…!


すると、私の不安に気づいたように、ギルが私を見ながら優しい声で言った。


「大丈夫。魔力を消して森の中へ入ったから闇は追いかけてはこないだろうし。タリズマンもあの場に集まった闇たちを逮捕するのに時間がかかるだろうからね」


私は、少しほっ、として胸をなでおろす。

その時、ロディがギルに向かって口を開いた。


「ギル、昼間頼まれた件だが…今聞くか?後にするか?」


ロディは、私を気にするような仕草を見せる。

ギルは、少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「ルミナにも関係のあることだ。今、教えてくれ」


ロディは、小さく息を吐くと、ハンドルを握って前を見たまま話し始めた。


「嬢ちゃんを襲った闇は、“ダウト”という組織らしい。ダウトは、二年前にタリズマンのブラックリストにも載っている。…デカい組織と見て間違いない」


ギルはそれを聞いて腕組みをすると、何かを考え込むように黙り込んだ。

“ダウト”

私が闇たちの会話を盗み聞きしたときに聞いたものと同じ名前だ。

タリズマンのブラックリストのことは、お父さんから以前聞いたことがある。確か、国際指名手配されるほどの悪い人たちをまとめた資料のことだったはず。


私は、運転席に座るロディの後ろ姿を見つめた。


ブラックリストの中まで調べられるなんて…やっぱりロディは凄腕の情報屋なんだ…!


と、その時、はっ!とする。


『“専属の情報屋さん”…ってこと?』

『まぁ、そんなもんだな』


昼間の酒場での会話が頭に蘇った。