だ…誰?!


ライトの光を腕で遮り、細く目を開け声の方を見ると、体格のいい短髪の男性と、細身でさらさらの長い髪の女性のシルエットが見えた。

逆光で顔は見えないが、どちらも白いマントを風になびかせている。


その時、闇の一人が白いマントを見るなり、大きな声を上げた。


『まずい!“タリズマン”だ!魔力を嗅ぎつけて来やがった!』


タリズマン?!

国の警察組織が、ギルを捕まえに来た…?!


ギルは、すうっと魔力を消してタリズマンを鋭い目つきで見ている。


ど、どうしよう!


周りは闇に囲まれていて、その奥にはタリズマンが待ち構えている。


ギルと私に、逃げ場なんてない…!


その時、ギルが私の手を取った。

ぱっ!と彼を見上げると、ギルは険しい顔をして、早口で私に指示を出す。


「ルミナ、タリズマンが魔力で威圧していて瞬間移動魔法が使えない。何をしても、君だけはここから逃がす…!」


私は、驚いてギルの外套をぎゅっ!と握る。


「ギルを置いていくわけにはいかないよ!私のために犠牲になって欲しくない!」


ギルは、険しい顔のまま敵に視線を移す。


もう、本当にどうしようもできないの?


何か………

何か方法があるはず……!


と、私が辺りを見渡した、その時だった。


ブォン!!


低いエンジン音が、辺りに響いた。

ギルは、それを聞いた瞬間、ばっ!と東の方向へと視線を向ける。

私もギルにつられて顔を向けると、石造りの道を猛スピードでこちらに向かってくる一台の赤い車が見えた。

辺りにいた闇とタリズマンも、動揺したようにその車を見つめる。


私が、ギルの方をちらり、と見上げると彼は一瞬、ふっ、と微笑んだ。


大きなブレーキ音と共に、赤い車は私たち目がけて迫ってくる。

私たちを取り囲んでいた闇たちが、慌てて逃げるように車から遠ざかると、赤い車は私とギルの目の前で華麗に停車した。