闇喰いに魔法のキス



私が体をこわばらせたその時、聞き覚えのある声が辺りに響いた。


『ルミナ…、君の方から来てくれるなんて、思ってもみなかったよ』


ばっ!と声の方へ視線を向けると、茶髪の男性が空中からこちらを見下ろしている。


「っ!リオネロ………!」


私がそう名前を口にすると、茶髪の男性はニヤリと笑って口を開いた。


『嬉しいな、名前を覚えててくれたんだ?』


キッ!と空中の男を睨むと、リオネロはさらりとその視線を受け流して言葉を続けた。


『そう怖い顔をしないで。大人しくシンのありかを言ってくれれば、痛い目には合わせないから。さぁ、俺たちの元へ来るんだ』


そんなの、信じられるわけない……!


私が、ぐっ!と体をこわばらせたその時。

たくましい腕が、私の肩をぐいっ!と抱き寄せた。

抱き寄せられるまま、ギルの胸元にぽすっ!と体を預けるとギルの温かな体温が服越しに伝わってきた。


「こりない奴らだな。ルミナを口説いていいのは僕だけだ」


先ほどまでとは違う、低い声が頭上から聞こえた。

ギルは、ぎゅっと私を抱きしめると、そのまま私から少し離れて早口で小さく言った。


「ルミナ、こうなったら仕方ない。危ないから下がってて。二度も君に傷をつけさせてたまるか」


ギル…、私の腕の傷を知っていたの…?


自分の腕に視線を落とすと、モートンに巻いてもらった包帯が袖からかすかに見えている。


その時、ギルがパァッ!と薔薇色の瞳を輝かせた。

その瞬間、感じたこともない大きさの魔力が辺りに立ち込める。

私たちを取り囲む闇たちも、あまりの威力に息をのむ。


これが、ギルの魔力…?

そこらの魔法使いとは、比べものにならない…!


凄まじい魔力を感じて動揺し始めた闇たちに向かって、ギルは低く凛とした声で言い放った。


「さぁ、一瞬でケリをつけてやる。消される覚悟ができた奴から、かかってこい…!」