夜空に浮かぶ月が、弱々しく私を照らす。

慰めるようなその光に、私は、はぁとため息をついた。


バイト先のおじさんは、“闇が取引先を襲った”って言っていた。

闇がお金や宝石を盗むために企業や店を襲うことがよくあることだとはいえ、私の仕事に関係するところが襲われるだなんて考えてもいなかった。


闇はこの国に悪い影響しか与えない。


お父さんが亡くなったのも、闇に対抗する魔法の研究を続けたことが原因だ。

本当に、嫌になる。


と、その時。不意に、月に照らされ地面に映っていた私の影が、ふっ!と消えた。


正確には違う。

私の影を覆い尽くす数の黒い影が、一斉に地面に映ったのだ。


驚いて空を見上げると、そこには黒いマントを着た六人組が宙に浮いていた。


な、何……!?


私が言葉を失っていると、六人の中の茶髪の男性がゆっくりと口を開く。


『お前…ラドリーの娘の“ルミナ”だな?』


その言葉を聞いて、ぐっ!と体に力が入る。


ラドリーというのは、お父さんの名前。


どうして知っているの?

この人たちは、一体…?


私が警戒心を強めて六人組を見つめていると、先ほどの茶髪の男性が、ニヤリと不気味に笑って言い放った。


『やはり、お前がルミナだな?

お前の親父が遺した“シン”の魔法を渡してもらうぞ!』



“シン”?

まるで聞き覚えがない。


動揺で動きが止まった私に、黒マントの六人組は一斉に腕を突き出した。


腕から放出された黒いイバラが、私に向かって襲いかかる。



攻撃魔法…!

ってことは、この人たちは“闇”…?!