私は、ぞくり!と体が震えた。


闇を集めて、一斉に動き出すつもり…?!

もし、あの人たちが私を捕まえたら、また無理やり私からシンのありかを聞き出そうとするに決まってる…!


その時、闇たちは不敵な笑みを浮かべながら低い声で言った。


『集合場所は“今夜八時、時計台”だぞ。…忘れるなよ?』

『あぁ、わかってるさ。遅れたら、リオネロ様に怒られるからな』


私が、ごくり、と喉を鳴らした時、闇たちは私がいるごみ捨て場の反対側の路地へと消えていった。

ふっと体の力が抜け、壁に寄り掛かる。


どうしよう。

闇たちが動き出したら、私に逃げ場なんてあるんだろうか。


“今夜八時、時計台”。


闇たちの集合場所は、はっきりと聞こえた。


そこからなるべく遠い場所に行くしか……

って、あれ……?


私はその時、ふと何かが頭に引っかかるような気がした。


“今夜八時、時計台”

どこかで聞いたような……?


その時、さっきまで一緒にいた銀髪の青年の声が頭に響いた。


『…あぁ。“今夜八時、時計台”な。俺は酒場に戻らずそのまま向かう。…お前もちゃんと来いよ?』


思い出した…!

たしか、レイも同じ時間、同じ場所で友達と会う約束をしていたはず…!


私は、ぎゅっと手のひらを握りしめる。


レイは、きっと闇が集まることを知らない。

このまま、レイが時計台に行ってしまったら闇の大群と鉢合わせしてしまう…!


もし、レイが闇に攻撃されたら……!


どくん!と大きく心臓が音を立てた。


行かなきゃ……!

レイに、約束の場所を変えて、早く時計台から離れるように伝えないと……!


レイは、“酒場に戻らずそのまま向かう”って言っていた。

レイの居場所がわからない以上、私も同じ時間に時計台に行くしかない…!


もし、私が闇に見つかったとしても、レイのことは、闇から遠ざけなくちゃ!


私はそう決心して、日の傾いてきた街へと走り出したのだった。