そ、そっか…


レイは、私に正体がバレないように、ギルを演じてくれれただけなんだもんね。



私が、はっ、と、呼吸をすると

レイはくすくすと笑い出した。


そして、すっ、と私を抱きしめる腕を緩め、顔を上げる。



二人の視線が至近距離で交わった。



「…ばーか、嘘だよ。」



レイの甘い声が、優しく耳に届いた。



「ギル以上に、いっぱいいっぱい甘やかして

………愛してやるから。」







どきん…!



胸が大きく音を立て、全身が、かぁっ!と熱くなる。



ふっ、と笑みを浮かべたレイは

私を見つめながら言った。



「“闇喰いギル”じゃなく、“ただのバーテンの俺”に、喰われる覚悟はあるか?ルミナ。」



…!



私は、小さく呼吸をした後

レイを見つめながら答える。



「…“ある”……。

…としか言わせないくせに。」



「お、分かってんじゃん。」



レイの体から、魔力が消える


それは、ギルとの永遠の別れ。



…でも、私は大丈夫。


これから、何が起こったって

レイが隣にいてくれれば、大丈夫。



「ルミナ。」



レイが私の名を呼んで、小さく囁いた。



「俺に、魔法かけて。」



「え…?」



「俺が魔力を失った後も、ずっと側にいれるように。」



その時、レイの瞳がぱぁっ、と、輝いた。


目の前に、見慣れた“ギル”が現れる。


黄金の髪の毛。

薔薇色の瞳。


ギルの最後の魔法は、禁忌じゃない。


私とこの姿で別れるための、“変身魔法”。


私は、優しく微笑むギルの頬に手を添えた。


私が魔法をかける方法。


そんなの、一つしかない。



「ギル。」



「……ん?」



「今まで私を守ってくれて、ありがとう。」



ギルは、甘く微笑んだ。


そして、柔らかな優しい声で呟く。



「僕は、君を守るためだけの闇喰いだから。

命をかけて、君を守るよ。」



“これからも、ずっと”。



最後に続けたその言葉は

私の心を優しく包み込んだ。



私は、ギルに魔法をかける。

一生、この人を離さないための、恋の魔法。



私は、優しく唇を重ねた。



私だけの“闇喰い”に

“魔法のキス”を───。




エピローグ*完


*fin*