「…話は、終わったか。」






ガロア警部の低い声が、法廷に響いた。


私たちは、全員はっ!として警部を見る。



…ついに、“その時”が来た。



ミラさんが、すっ、と私の隣に立った。


隣を見上げると、ミラさんは微かに口角を上げて、優しく私に耳打ちした。



「…大丈夫よ。

ちゃんと、“彼らの罪状”を聞きなさい。」



…!


私は、ぐっ、と手を握りしめて頷いた。


透明な壁の向こうに、レイ、ロディ、モートン、ルオンが並ぶ。


そして、その奥には、彼らを力強い瞳で見つめるガロア警部。



私が、ごくり、と喉を鳴らした、その時

ガロア警部が、ゆっくりと口を開いた。



「レイ=グライツ、及び、ルオン=ランダート。」



名を呼ばれた二人は、微かに目を細めてガロア警部を見つめた。


そして、二人は同時に目を閉じる。



どくん…どくん…



心臓が、鈍く音を立てる。


私が、透明な壁に手をついたまま

ずるずると床に沈んだ時


ガロア警部の野太い声が法廷に響いた。



「お前らを………“魔力剥奪の刑”に処す。」



「「………………………………。


……………………………………え?」」




長い沈黙の後

レイとルオンが同時に裏返った声を上げた。


ロディとモートンは、目を見開き

私は、ぱっ!と顔を上げた。



い……

今、何て………?



私が、理解出来ずにまばたきをしていると

レイとルオンがガロア警部に向かって言った。



「「あの…もう一回お願いします。」」



「ん、聞こえなかったのか?

お前らを、“魔力剥奪の刑”に処す。」



「「………。え、ちょっと待って。

何だって?!!」」



見事に声が揃っていることにも気がつかない様子で二人は動揺を隠せずに狼狽えた。


レイが、ガロア警部に向かって尋ねる。



「俺たち、“死刑”なんじゃないんですか?」



「ん?死にたかったのか?」



「いや、そうじゃないですけど…っ!」



すると、ガロア警部は静かに語り始めた。



「レイは、リバウンドのリスクが高いにもかかわらず、ブラックリストに載っている組織をほぼ一人で壊滅させた上に、ラルフの件では逮捕に貢献しただろう。

ルオンは、研究所の破壊やその他もろもろの悪事はあるが、“研究”と称した人体実験はサンクヘレナにおいてあってはならないことだ。」



ガロア警部は二人を見つめながら続ける。



「幼き頃の二人のことを救えなかった責任はタリズマンにもある。禁忌の研究をあの研究所に任せたのは他でもない国家だからな。

そこを考慮した結果だ。文句があるなら聞くが?」



にっ、と笑うガロア警部に、ルオンがおずおずと言った。



「い、いや…文句はないですけど…。

夢じゃないですよね…?」



「この場で思いっきり殴ってやろうか?」



「あ、全力で遠慮します。」



…!


緊張と絶望で体温が下がっていた私の体に、血が通い始めたような気がした。


胸の奥から、感情が溢れ出す。