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「レイ…、どこまで行ってるんだろう?」



午前十一時四十分。


私は酒場のソファに腰をかけて、窓の外を見眺めていた。


裏通りを行き交う人々の中に、レイの姿はない。



バーテンが帰ってこない以上、酒場の扉は
“close”のままだ。



…お腹すいたなぁ。


でも、ここまで待ったんだから、もう最後まで待とう。



と、その時

キィ…、と酒場の扉が音を立てた。


ぱっ、と視線を向けると

そこにはロディ、ルオン、モートンの姿。







私は、彼らを見て立ち上がった時

先頭で酒場の中に入ってきたロディが、私に声をかけた。



「よぉ、嬢ちゃん。レイはいるか?」



私は、いつもと変わらないロディの口調に、はっ、として答える。



「レイは、私が起きた時にはもう出かけていて、ここにはいないの。

もうすぐ帰って来ると思うけど…」



私は、そこまで言うと

驚いた表情で、ロディに尋ねた。



「どうしたの?みんな揃って。

モートンまで酒場に来るなんて、珍しいね」



すると、ロディは私を見つめて答える。



「ガロア警部に呼ばれたんだよ。

酒場に来るように、って。」



え…?


私は、きょとん、としてロディを見つめた。



…ガロア警部に呼ばれた…?

どうして…?



「あの…今日は何かあるの?」



私がそう尋ねると、少し目を細めたルオンが私に向かって口を開いた。



「姉さん、何にも知らないの?本当、ノーテンキだね。

タリズマンのおっさんが、僕たちを全員呼ぶ理由なんて、一つしかないじゃん。」



…?



猫を被らずに、少し低いトーンでそう言ったルオンに、私は違和感を覚えた。


話の流れが掴めずに、私は頭が混乱してくる。


すると、モートンが私を見ながら口を開いた。



「ルミナさん。

レイ君は、あなたに何も伝えてないのですか?」



…え?



私は、ぎこちなく、こくん、と頷いた。



レイが、私に?

特に何も言われてない…よね?



すると、その時

ルオンが、ぱっと私の手を取って、優しく握りしめながら私に向かって小さく言った。



「…僕も、昨日、姉さんとデートしたかったなぁ。

姉さんの顔を見れるのが今日で最後なんて、僕…悲しくて耐えられないよ。」







え…っ?


“顔を見れるのが今日で最後”?



「ルオン、それってどういう……」



私が、ルオンに向かって尋ねようとした


その時


キィ、と酒場の扉が開いた。