闇喰いに魔法のキス



その時、私の顔がこわばったのに気がついたモートンが、優しく穏やかな声で言った。


「ルミナさんが心配する必要はありません。君には、ギルがついていますから。」


私は、モートンの言葉に呼吸さえ忘れた。


“ギル”


今、モートンは確かにギルって言ったよね…?


私は、ばっ!と顔を上げると、モートンに向かって早口で尋ねた。


「モートンは、ギルを知っているんですか?!」

「えぇ。彼とは長年の付き合いですから。」


どくん、どくん、と心臓が音を立てる。

その時、窓から差し込む光がキラキラとモートンの髪の毛を照らした。

淡い茶色のふわふわの髪の毛。

月に照らされたギルの髪の毛は綺麗な黄金の髪の毛だった。

でも、この優しい口調はどこかギルと重なる。

それに、モートンはお父さんの知り合いで、私のことも知っていた。


私は、ある予感が頭をよぎって恐る恐る口を開いた。


「もしかして…あなたがギルなんですか…?」


モートンは、ぴくり、と肩を震わせる。

疑問を口にした瞬間、私の緊張はピークに達していた。


…本当に…

本当に、モートンがギルなら……


私が、モートンの答えをドキドキしながら待っていた次の瞬間。


……プゥ!


?!


聞き覚えのある音に全身が固まった。


モートンが、「はは。」と笑いながら申し訳なさそうに言った。


「すみません。緊張しすぎて、おならが出ちゃいました」


その瞬間。

今まで黙っていたレイがモートンのふわふわの髪の毛を、がしっ!と掴み、しびれを切らしたように叫んだ。


「てめぇ!どこのファンタジーキャラがヒロインの質問に屁で答えんだよ!!し…心臓とまるかと思ったじゃねぇか!!」

「レイ君、痛いです…っ!」


二人のやり取りに、ふっ、と全身の力が抜ける。


…は、はぐらかされたのかな…?


予想の斜め上すぎて、私はただレイとモートンを見つめることしかできない。

すると、レイから逃れたモートンが、私に向かって口を開いた。


「ルミナさん、ギルは僕みたいな男ではありませんよ。彼は僕よりもずっと若いし、もっとちゃんとした男です」