どきん!



急に甘いギルモードの声になったレイに

私は心臓が鳴り止まない。


私は、ごくっ、と喉を鳴らして

おずおずとベッドに近づく。



…え、えっと…

どうやって足をあげるんだっけ…?


先に動かすのは右足だっけ、左足だっけ…?



急に頭が混乱して、ベッドの側で固まっていると

レイが、すっ、と私に手を伸ばした。


そして、そのまま私の腕を優しく掴み

ゆっくりと自分の方へと引き寄せた。



「…っ!」



ギシ…



ベッドが軋み、私はレイの腕の中へと囚われた。


布団の中で、レイの匂いに包まれる。



…っ…

こ、こんな状況で寝るの…?


無理だよ…っ…!



私が、ぎゅっ、と体に力を入れた、その時

耳元でレイの掠れた声が聞こえた。



「…わがまま言ってごめんな。

本当に、何もしないから。」



…!


いつもより落ち着いているようなレイの声に私はだんだん体の力が抜けていく。



「……眠りたくない日は、初めてだ。

眠ったら、デートが終わっちまう。」



レイは、そう続けて小さく呼吸をした。


私は、ドキドキしながら口を開く。



「…わ、私も……眠りたくないな。

たぶん、緊張で眠れないけど…。」



その時

レイの大きな手が、私のうなじに、つ…、と触れた。


優しく、頭を包み込まれる。



…!


レイ…?



私が彼を見上げようとした、次の瞬間

レイのどこか切なげな声が耳に届いた。



「……最後の日に、好きなやつといれてよかった……」



え……?



無意識に呟かれたようなその声に

私は、はっ、とした。


言葉の真意を尋ねようとした時

レイは、私をぎゅうっ、と抱きしめた。



「!…れ……レイ……?」



彼の名前を小さく呼ぶと

レイは掠れた声で呟く。



「ごめん…このまま寝ていいか…?」







「今日は………離したくないんだ。」



その後、レイは何も言わなかった。


レイの腕は、微かに震えていた。


私は、なぜかレイに尋ねようとした言葉が出せなかった。


時計の針が時を刻む音だけが

静かな部屋に響いていたのだった。