…っ!
つい、レイの腕に体を寄せると
レイは無言で私の手を握った。
「!……レイ…?」
私の声が、静かな空間に小さく響いた。
レイの長い指から体温が伝わってきたその時
レイがぽつり、と呟いた声が耳に届いた。
「…俺も、今日は夢の中にいる気分だ。
ずっと夢から覚めたくないって、思ってる」
少し掠れた低い声に、私は胸の鼓動が加速した。
レイは手を握る指に微かに力を入れて言葉を続ける。
「久しぶりに笑ったし、ルミナを一日中独り占め出来るなんて今まで想像出来なかったから。
ルミナのおかげで、一生の思い出が出来た。今日、俺に付き合ってくれてありがとな」
私は、珍しく素直な気持ちを口をするレイの手を握り返しながら答えた。
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。
私も、今日のことは絶対忘れない。」
レイは、微かに私の方へと顔を向けた。
そして、優しげな瞳で私を見つめる。
観覧車が頂上を通り過ぎ、地上へと降り始めた。
…もうちょっとで、観覧車が終わっちゃう。
レイはこの後レストランを予約してくれているらしいから、デートはまだ終わりじゃないって分かっているけど
どこか寂しい気分になる。
私は、レイを見つめ返して口を開いた。
「レイ、またここに来ようよ。
デートもいいけど、今度はロディやモートン、ルオンも一緒に。」
「!」
レイの瞳が、微かに見開かれた気がした。
私は、にこり、と笑って言葉を続ける。
「二人で行くとしたら、次は水族館とかはどう?映画を見るのも楽しそう。
あ、でも、レイと一緒に過ごせるなら、
酒場でゆっくりするだけでも、私は……」
その時、ふいにレイの唇が私の言葉の続きを制した。
急に重ねられた唇の感触に、私は目を見開く。
甘い水音とともにレイが私から離れた時
レイは私から目を逸らし、窓の外を眺めながら呟いた。
「…あんま可愛いこと言うな、ばーか。」
…!
私は、体に熱が宿るのを感じながら
レイの肩に寄りかかって目を閉じた。
何度も何度も、レイの声を頭の中で反芻する。
…本当に、幸せ。
レイ、大好き。
ずっと、一緒にいれるといいな。
私は、ずっとこのままでいたいと
レイと繋がる手に、きゅっ、と力を込めた。
目を閉じ、甘い余韻に浸っている私は
窓の外をどこか遠い瞳で見つめているレイが何を考えているのか、心の中を察することは出来なかった。



