私たちはコーヒーカップの後、二人手を繋いで園を回り、ジェットコースターやお化け屋敷、脱出迷路などを楽しんで
夕方までに、ほぼ全てのアトラクションを制覇した。
そして、閉園間近
私たちは観覧車へと向かっている。
…最後は、観覧車かぁ。
サンクヘレナの夜景が綺麗だろうな…。
小さな丸い観覧車に入ると、二人っきりだということを強く意識する。
でも、不思議と心は落ち着いていた。
もちろん、胸はドキドキうるさいけれど
それ以上にレイとここに共にいれる幸せを感じるからだと思う。
ゴウン…
観覧車が回り、地上が少しずつ遠ざかっていく。
私は、観覧車の窓の外に広がっていく景色を眺めながらレイに言った。
「レイ、遊園地、すっごく楽しかったね…!
今日のハイライトは、メリーゴーランドに乗った瞬間、照れて真顔になったレイだね。」
「何言ってんだ。
お化け屋敷に入る前に、散々“怖くないから先頭歩く”とか言ってたくせに、入って十秒でリタイアドアにダッシュしたのはどこのどいつだよ。」
「ジェットコースターで酔ったフリして膝枕してくれないと死ぬって私に言ってきたのはどこの誰?」
「いいじゃんか、ちょっとくらい仮病使ったって。」
くすくす、と自然に笑みがこぼれる。
二人目を合わせて笑いあうのは何回目だろう。
…夢みたい。
今日起こった出来事は、今までの私にはまるで無縁だと思っていたことばかりで
ひどく現実味がないように思える。
私は、窓から遠くの夜景を眺めながら呟いた。
「なんか…怖いな。」
「?
高いところ苦手なのか?」
私は、レイの言葉に首を横に振って答える。
「そうじゃなくて、こんなに幸せでいいのかなって思ったの。
今日が夢みたいに幸せすぎたから、その分、この先悪いことが起こりそうで…」
「!」
すると、急にレイが無言になった。
ぱっ、とレイの方を見ると
レイは私の方を見て、やけに真剣な顔をしている。
私は、ふっ、と顔を緩めながらレイに言った。
「ごめんなさい、変なこと言って。そんな真剣にとらえないでいいよ。
ただ、なんとなくそう思ってしまうくらい、今日が楽しかったってことを言いたかっただけだから。」
と、私が微笑んだ
その時
真向かいに座るレイが、すっ、と立ち上がり
私の横に腰を下ろした。
ぐらっ、と観覧車が揺れる。



