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「…はぁ。
やっと嵐が去った。」
ルオンがロディと共に酒場を出て行った後
ソファに、どさ、と腰を下ろしたレイは息を吐きながらそう呟いた。
悪態をつきながらもどこか心のわだかまりが解けたような顔をしているレイに
私は少しほっ、としてレイの隣に座った。
と、その時
ブブブ…、とレイのポケットからケータイのバイブの音がした。
…?
電話?
レイが、ケータイを手に取り
画面に目をやる。
「…!」
微かに、彼の瞳が見開かれた。
私がレイを見つめていると、レイはスッ、と画面をスライドさせてケータイを耳に当てた。
「…もしもし。」
レイが、どこか真剣な声で通話を始めた。
急にレイのまとう空気が変わった気がした。
しかし、その違和感はほんの少しで
気にしなければ見過ごしてしまうほどのものだった。
レイの声が静かな酒場に響く。
「…あぁ、はい。
“三日後”…ですか…?」
“三日後”…?
電話、誰からだろう。
何かの仕事の電話かな…?
すると、レイは微かに口角を上げながら話を続ける。
「はは…っ!俺は、逃げも隠れもしないって言ったじゃないですか。
今さら悪あがきなんてしませんよ。」
…?
軽い笑い声を上げながらも、その内容は楽しいものではないことだけは分かる。
「……はい、分かりました。じゃ……。」
その時
レイが、プツ…、と電話を切った。
酒場に沈黙が流れる。
私は、おずおずとレイに尋ねた。
「今の電話…誰からだったの?」
すると、レイは
通話が終わって真っ暗になった画面を見つめながら、ぽつり、と呟いた。
「…あぁ。…ガロアさんだよ。」
えっ…?
“ガロアさん”?
予想もしていなかった名前に、私はぴくり、と肩を震わせた。
レイは、深く語ろうとはせずに、画面を見つめたまま微かに目を細めた。
「レイ。…三日後、何かあるの?」
私が、思い切ってそう尋ねた時
レイが、ぱっ、と顔を上げた。
そして、無意識に口から出たように私の名前を呼ぶ。
「ルミナ。」
「…何…?」
私が聞き返した、その時
レイが私の方を見た。
彼の瞳は、相変わらず綺麗な碧色だったが
その奥にはどこか儚げな光が灯っていた。
はっ、とした瞬間
レイが微かに首を傾けて、私の顔を覗き込んだ。
そして、聞いたこともない甘い声で言い放つ。
「明後日、デート行くぞ。」
「えっ?!!」
あ、明後日……
デート?!!



