聞き覚えのある声に、はっ!とした瞬間


ロディの後ろから、黄金の髪の少年が

ひょっこりと顔を出した。


綺麗な碧眼と目が合う。



「!!る……ルオン………?!」



彼の名前を呼ぶと、つい声が裏返ってしまった。


それよりも、目の前にルオンがいることが信じられない。



夢でも見ているの…?



頬を軽くつねってみるが、目の前の少年が消えることはない。



げ、現実だ…!



私が目をぱちぱちとしていると

カウンターにいたレイが、すっ、と私の隣に並んで、ドスの利いた声で言った。



「ルオン…お前、何しに来た…!」



するとルオンは、天使のように、にこっ、と微笑むと、酒場の中へと足を踏み入れた。


そして、私の目の前まで来ると

きゅっ!と私の手を取り、握りしめる。



っ!

えっ?!



ルオンの行動に驚いて、ぴくっと反応した私の隣で、レイが静かに機嫌を悪くした瞬間

ルオンが私を見つめながら口を開いた。



「僕は、ルミナにお礼を言いに来たんだよ。

兄さんは黙ってて。興味ないから。」



「あっ、てめぇ!そこ、手ぇ離せ!

ナチュラルに近づいてんじゃねぇよ!」



レイが私の手を握っているルオンの手をぺしっ、と叩き

無理やり私とルオンの間に割り込む。


威嚇を続けるレイの後ろから

私はルオンに向かって尋ねた。



「今の、どういう意味なの?」



すると、ルオンはレイの肩越しに私を見つめて答えた。



「ルミナが名もなき魔法で兄さんの持つシンの魔力を全部無効化してくれたから、僕にかかっているシンも解けたんだ。

そのおかげで僕は永遠の眠りから目覚められたから、お礼を言いに来たってわけ。」






そっか…!


闇魔法の魔力を無効化にする名もなき魔法は

レイにかかったシンのリバウンドだけでなくルオンにかけられたシンの魔力も消したんだ…!



私は、本来なら目を開けることのないはずのルオンが目の前にいることの意味を、やっと理解した。



ルオンは、レイの体の横から、すっ、と顔を出して私に言った。



「本当にありがとう。

やっぱりルミナは、僕にとって“大切な人”だよ。」



っ!


にっこりと笑ったその顔は、エンプティの時とはまるで違う、私と出会った時のルオンの顔だった。


…よかった。


もう、ルオンは一人で禁忌を使うことはなさそうだ。


レイとも、和解したみたいだし……



と、その時

レイがルオンを見下ろしながら口を開いた。



「“大切な人”だぁ……?

お前、この期に及んで、まだルミナに近づく気か!」



「僕、ルミナと話してるの楽しいんだもん。

もちろん兄さんとも話したいよ?僕、素直になれないだけで、本当は兄さんのこと尊敬してるし。」



「さっき俺に興味ないって言ってたじゃねぇか…ッ!

そうやって可愛い年下のフリして、猫かぶったって無駄だぞ!」