闇喰いに魔法のキス




すると、レイが、キッ!と私を睨んで口を開いた。



「お前、なんでここにいるんだ。

戦う力なんてないのに、闇のうろつく夜中に出歩きやがって…。」



私は、レイの瞳をまっすぐ見つめた。


そして、ずっと伝えたかった言葉を口にする。



「レイを…探しに来たの。

あなたに会いたくて、ここまで来たの。」



「…!」



レイは、微かに薔薇色の瞳を見開いた。


ぴくり、と眉を動かすが

レイは動揺していないようにいつもの低い声で私に言った。



「俺は、過去のこともお前のことも思い出す気はないって言ったよな。」



「分かってる…!でも、諦めきれないの。

話すことしか出来なかった前とは違う。今なら、シンのリバウンドを消せるかもしれない…!」



レイは、私から名もなき魔法のことを聞いた瞬間、目を見開いた。


しかし、すぐに元のポーカーフェイスに戻ると

乱れた気持ちをぶつけるように声を荒げた。



「お前と話してると、調子が狂う…!

どうして、あれだけひどいことを言って突き放しても、俺を追ってくるんだよ!」



…!

“どうして”…?


そんなの、答えは一つだ。



レイの薔薇色の瞳の奥が揺れた瞬間

私は彼に向かって言い放った。



「好きだからだよ…!

何を言われたって、忘れられたって、簡単に諦められるわけないじゃない!」



「!」



「……好きなんだもん……。

無愛想で口が悪くて、悪魔みたいだけど、本当はあったかくて優しくて強いレイのこと……、っ!」



その瞬間

レイのポーカーフェイスが崩れた。



はっ!とした瞬間、腕を掴まれ

そのまま、強く引き寄せられる。



…ぎゅうっ!



レイは、きつく私を抱きしめた。


一瞬、何が起こったのか分からなかった。


でも、服越しに伝わるレイの体温が、徐々に私に状況を理解させていく。


体がこわばる。


一気に体が熱くなって、胸がうるさく鳴りだした。



「…れ……レイ……?」



動揺しながら彼の名前を呼ぶと

耳元で余裕のないレイの声が聞こえた。



「…昼間、お前と別れた後。

自分でもなぜか分からないけど、無性にお前を突き放した自分に腹が立った。」



…!



「お前が、泣きそうなのを堪えて笑ってたことに気づいていたのに、傷つける言葉を言った自分が、許せなくて、苦しくて。

ずっと、お前のことが頭から離れなかった」



レイの声は、少し震えていた。


自分の中に生まれた未知の感情に、ひどく動揺しているようだった。



私が小さく呼吸をすると、レイは熱のこもった声で言った。



「…さっき、闇の魔力を感じた時、無意識のうちに体が動いた。

どうしてもお前の顔が見たくなって、不安で不安で、仕方がなかった。」






確か、レイは以前、闇の魔力を感じられると言っていた。


レイはお父さんに私を預けられた時からずっと、こうやって私を守ってきてくれたんだ。



その時

レイが、小さく掠れた声で呟いた。



「…俺、やっぱりダメみたいだ。」



「え…?」



つい、聞き返し、顔を上げると

綺麗な薔薇色の瞳と視線が交わった。



どくん…!



全身の体温が上がった瞬間

余裕のない熱を宿した甘い声が私の耳に届いた。



「俺、お前が側にいないと、ダメみたいだ」