遠ざかった意識が

一瞬にして、はっきりとする。



…今の……声……



それは、過去の記憶の闇喰いの声ではなく

聞き慣れた、酒場のバーテンの声。



声のする方を微かに目を開いて見た時

視界に、綺麗な銀色の髪の毛が見えた。



……!!



その時、黒マントたちの動揺したような声が響く。



『げっ!どうしてお前がここに…?!』



私は、身動きが取れないまま
この場に現れた青年を見つめる。



その時、青年が、ぱっ、と私を見た。


綺麗な薔薇色の瞳が私を捉える。



その瞳が、パァッと光り輝いた瞬間

パァン!と私の体に巻き付いていた
黒いイバラが消え去った。



っ!



苦しみから解放された瞬間

がくん!と体が地面に向かって落下していく



!!


落ちるっ…………



ぎゅっ!と目をつぶった瞬間

たくましい腕が私を抱きとめた。







腕の感触に驚いて目を開けると

そこには整った顔立ちをした銀髪の青年が見えた。


私をしっかりと抱きとめている。



私は、言葉が出なかった。



ギルと出会った日と、同じ状況。

同じ感触。

同じ瞳の色。



だけど、彼の口調は、私の過去の記憶とはまるで違った。



「おい、何やってんだ、バカ!

ガキはもう帰って寝てる時間だろーが!」



…っ!



聞き慣れた荒い口調。


その言葉の裏に隠れた優しさ。


抱きとめる腕の温かさ。



それは、紛れもなく、私のよく知る“レイ”だった。



その時

動揺する黒マントを、薔薇色の瞳が、ギロ!と睨んだ。


パァッ!とその瞳が鈍く輝いた瞬間

黒マント達は叫び声をあげながら消えていく。



『ぎゃぁああぁっ!』






私は、言葉が出せずにその光景を見つめた。


レイは、一気に黒マントを始末すると

ふっ、と瞳の光を消した。



レイの姿で、魔法を使っているのは初めて見た。



私が何も言えずにいると

レイは無言で地面に降り立った。



…トッ…。



冷たい表情とは裏腹に、私を優しく丁寧に地面に降ろす。


私は、黙ったまま隣に立つレイに向かって、小さく彼の名前を呼んだ。



「……レイ……。」