「…はぁ、はぁっ。」



蝶に導かれるまま、夜に包まれた街を走る。


私は、必死で足を動かしながら蝶を追った。



…息苦しい…!

でもここで立ち止まったら、蝶を見失う…!



力の限り走っていると

ふいに蝶が街灯に止まった。



…!



蝶につられて立ち止まり

私は、蝶が優雅に羽を上下に動かす様子を眺める。



…飛ぶのやめちゃった。

やっぱり、道案内なんてしてくれてなかったのかな…?



その瞬間

一気に疲労と絶望が襲ってきた。


手を膝について、呼吸をする。


頭に浮かぶのは、最後に見たレイの背中。



…追いつかない。


どうやっても、レイに追いつけないよ。



「…どこにいるの、レイ……。」



小さく、そう呟くと

悔しさと不甲斐なさが胸に込み上げる。



レイの気持ちを知りたかった。

本当の声を聞きたかった。



でも、その願いはもう叶わない。



彼の姿を見たいのに。

また、笑顔を見たいのに。



私の前に、レイはもういない。



…レイが私の側にいて、好きだと言ってくれたのも

お父さんとの繋がりで、最初から色眼鏡越しの世界を見てきたからだったのかもしれない。


私自身を好きになってくれたわけじゃない。


お父さんとの約束がなければ、私とレイは繋がりすらなかった。


会うことだって、きっとなかった。



レイ………

本当に、このまま会えないの…?



つい、涙が溢れそうになった瞬間

ふいに、月に照らされ地面に映っていた私の影が、ふっ!と消えた。



「えっ……!」



正確には違う。


私の影を覆い尽くす数の黒い影が
一斉に地面に映ったのだ。



ばっ!



驚いて空を見上げると

そこには黒いマントを着た六人組が
宙に浮いていた。



!!


あれは、ダウト…?!



恐怖と共に、既視感が私の心を占めた。


その時

黒マントの一人が私に向かって口を開いた。



『お前…ラドリーの娘の“ルミナ”だな?』







私はその言葉を聞いて、ぐっ!と体に力が入る。


私は、黒マントたちを睨みながら答えた。



「そうよ。

…今さら、私に何の用…?」



すると、黒マントの一人が低い声で言った。



『ギルによってエンプティ様が倒されたんだ。

ギルに復讐してやる…!奴の居場所を教えろ!』






“復讐”…?!