どくん、どくん、と心臓が鳴る。
緊張感が漂うログハウスに、ロディの声が響いた。
「嬢ちゃん、大丈夫だ。
自分と、レイを信じろ。」
…!
自分と、レイを
…“信じる”。
私は、ぐっ、と手のひらを握りしめた。
そして覚悟を胸に、まっすぐモートンを見つめる。
「…分かりました。
名もなき魔法の魔力を、私にください。」
モートンは、力強く頷くと
ばさっ!と白衣を翻して歩き出した。
「ログハウスの中では魔方陣を広げられません。
庭に出ましょう。」
私とロディは、モートンの言葉に頷いて
白衣の彼を追ってログハウスの外へと足を踏み出したのだった。
****
ザァァ…
樹海の木々が、風に揺られて音を立てる。
月明かりが、優しく庭に出た私たちを照らした。
真っ暗な世界に、三人だけ取り残されたみたい…。
風の音とフクロウの鳴き声しか聞こえない。
その時
モートンが私に向かって声をかけた。
「チャンスは一度です。
…心の準備はいいですか、ルミナさん。」
!
私は、深く頷いた。
…もう、迷わない。
レイのリバウンドを解くんだ。
私の力で……!
すると、モートンは小さく呼吸をした。
翠の瞳が輝くと同時に、辺りを吹いてた風がぴたり、と止む。
ロディが樹海を見上げた、その瞬間
モートンが、私に向かって
ばっ!と腕を突き出した。
パァァァッ!!
「っ!!」
次の瞬間
私を中心にして足元に見覚えのある魔方陣が広がった。
古代文字が私を取り囲むようにぐるぐる回り竜巻のように陣から風が吹き出す。
私は、必死で風の圧に耐えるように足に力を入れて踏ん張った。
モートンの瞳が、一層強く光り輝いたその時
ドッ!と、体の中に魔力が流れ込む感覚がした。
それは、一瞬の出来事で
ふっ、と魔方陣が消えた瞬間に、自身に魔力が宿ったことを把握する。
不思議と、体が熱くなったような気がした。
モートンが、「ふぅ。」と息を吐いて地面に座り込むと
ロディは、私に駆け寄って声をかけた。
「嬢ちゃん、どうだ?大丈夫だったか?」
私は、ロディを見上げながら答える。
「うん、ちゃんと魔力は受け取った…!」
私は確かな足取りでロディへと歩み寄った。
そして、視線を逸らさずに言葉を続ける。
「行こう、酒場に。
レイのところに…!」
ロディは、真剣な表情で私の言葉に頷いた。
…ここからが、勝負だ。
絶対、レイの記憶を取り戻してみせる!
私は、疲労困憊のモートンに見送られながら
ロディと共に樹海へと走り出したのだった。



