少し声のトーンが低くなったレイを気にしていると
レイは話題を変えるようにモートンへと視線を移し、口を開いた。
「おい、モートン。お前、いくら研究の邪魔されたくないからって、庭じゅうに魔方陣を張り巡らせるなよ」
すると、モートンはどこかぼーっとした様子でゆっくり答えた。
「闇に襲われると困るんです。無駄に魔力を使うのも疲れるので…。レイ君も、わざわざ避けて歩かないで、僕の魔方陣を魔力で消せばいいのに」
私がモートンの言葉に驚いてレイを見ると、レイは表情を変えずにさらりと言った。
「…俺は魔力なんか持ってねぇよ。俺がただの人間だってことをお前は知ってるだろ、モートン」
モートンは、その言葉を聞いて、はっ!としたように肩を揺らした。
そして、私とレイを交互に見て小さく呟く。
「…そうでした。レイ君は、魔法を使わないんでしたね」
私は、モートンの言葉にレイを見つめた。
てっきり、レイも魔法使いなのかと思った。
レイは“普通の人間”なんだ?
するとその時、机の上にフラスコと共に置いてある一冊の魔法書が目に入った。
私は無意識に声をあげる。
「これ…、お父さんの持っていた魔法書と同じ…!」
それは、表紙に千歳草が描かれている、古くて分厚い魔法書だった。
じっと見つめていると、モートンは机の上の魔法書を手にとって私の側へと持ってきた。
「これは、僕が今研究しているもので…ラドリーから譲り受けた魔法書なんですよ」
お父さんから譲り受けた…?
モートンの言葉に、私はまじまじと魔法書を見つめる。
「この魔法書には、何が書かれているんですか?」
すると、モートンは少しの沈黙の後、真剣な声で答えた。
「これは古代の魔法を記した書なんです。主に、禁忌とされている闇魔法が載っています」
どくん!
心臓が鈍く鳴った。
禁忌とされている闇魔法…?
一気に身体中の体温が下がった。
やっぱりお父さんは、闇魔法の研究をしていたの…?



