ピチチチ……


朝の日差しが窓から差し込む。


私は、一睡も出来ないままログハウスのベッドに横になっている。



…昨日は、モートンに連れられてログハウスに泊めてもらった。


レイとは、あれから一言も話せなかった。


レイの冷たい瞳と声が、何度も蘇っては消えていく。



…あれは、本当に“レイ”だったの…?



全部、悪夢だと思いたいけど

レイを抱きしめた時に私の服についた血が、全て現実であったことを物語っていた。



…コンコン







扉をノックする音に体を起こすと

ガチャ、と開いた扉から、ふわふわの髪の毛の男性が顔を出した。



「ルミナさん。

朝ごはんが出来ましたよ。」



モートン……。


ゆっくりと部屋に入ってきたモートンは、白衣の袖を握りしめながら私に声をかけた。



「…大丈夫ですか?」



ぴくり、と体が震える。

前髪から覗く翠の瞳は、不安げに弱々しく揺れていた。



「…大丈夫です。

ごめんなさい、泊まらせていただく上にベッドまで借りてしまって…。」



「いえ、気にしないでください。

僕はいつもこの部屋まで来るのが面倒くさくて、ソファか研究室の机で寝ていますから。」



モートンは、「ロディ君が逃げ出したせいで家には食材がたくさんありますし。」と、苦笑して言葉を続けた。



…私に気を遣わせないようにしてくれてるんだ。



私はモートンに小さく微笑み返し、ベッドから床に降りた。


モートンは、部屋から出て行きながら口を開いた。



「あ、朝ごはんの前に顔を洗ってスッキリしてはどうですか?

洗面所は部屋を出て左です。」



「ありがとうございます。」



モートンが部屋を出た後

私は小さく呼吸をして俯いた。


…昨日のことの現実感がなさすぎて、まだ自分の中で整理がついていない。


でも、またレイに拒絶の言葉を言われたら、立ち直れる自信がない。


…レイ…。



私は、押し寄せてくる不安と動揺を振り切るように頭をぶんぶんと振った。



モートンの言う通り、顔を洗ってスッキリしよう。