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チッ…チッ…チッ…
秒針の音が、酒場に響く。
レイとロディが出て行ってから六時間が経過した。
時計の針は、午後十一時を指している。
…何回、時計を見上げただろう。
「ルミナさん。」
「!」
モートンが、ソファに腰掛ける私に優しく声をかけた。
「ココアでも飲みませんか?
こういう時は、甘いものを口に入れると少しは落ち着きますよ。」
にっこりと微笑むモートンに、私は小さく呼吸をして頷く。
…気を遣ってくれてる…。
モートンは、優しいな…。
あれから、ダウト達が酒場にやってくることはなく
夜の街には静けさが漂っている。
…いくら考えて不安になったって、キリがないよね。
レイとロディは、絶対帰って来てくれる。
今は信じて、待つことしかできないんだ。
私が、カウンターへと向かうためにソファから腰を上げた
その時だった。
……ブロロロ……
「「!!」」
酒場の外から、聞き慣れたエンジン音が聞こえた。
私とモートンは、はっ!として窓の外を見る。
すると、そこには真っ赤な外車。
!!
ロディの愛車…!
ということは………
その時
バタン!と、車の扉が閉まる音がした。
どくん、どくん…
急に心臓が音を立て始める。
体が硬直した瞬間
酒場の扉が、ゆっくりと開かれた。
………キィ。
!
酒場に、一筋の月明かりが入った。
開かれた扉の向こうに立っていたのは
銀色の青年の姿。
!!
「レイっ!!」
私は、彼の名前を叫んで
無意識のうちに駆け出し、彼に抱きついた。
ぎゅう…!と強く抱きしめる。
レイの体は傷だらけで、服はボロボロ。
でも、レイの体温はしっかりと私伝わってくる。
…レイだ。
生きてた……!
帰って来た………!
「レイ、リバウンドは?!
体は大丈夫…?!」
私は、早口でレイに声をかけながら彼の体を見つめた。
傷だらけだが、致命傷となるような傷はなく呼吸も安定しているようだ。
…まさか、シンにリバウンドはなかったの?
「ねぇ、レイ………」
私が、彼の名を呼んだ
その時だった。



