俺は、ばっ!とその場から空中へ飛び上がり鋭い爪を避ける。


再び防戦一方となった戦いに、俺は頭の中をフル回転させていた。



…どうすれば、奴の動きを止められる?


せめて、至近距離で動けなくさせることができたら

俺はエンプティにシンを使えるのに…!


だけど、下手なタイミングでシンを使えば、そのまま俺の魔力ごとシンを奪われて返り討ちにされる。



…奴の魔法は厄介すぎて、迂闊にシンを唱えられない…!



次の瞬間

瞬間移動魔法で俺の上空へと現れたエンプティが、思いっきり俺を蹴り落とした。



「!!」



ドッ!と鈍い音が響いた時には、俺の体は地面に向かって一直線に落ちていた。



ドォン!!



魔力を使って衝撃を和らげるが、今までの攻撃によって蓄積された痛みが体を襲う。



くそ…!

タリズマンがいれば、あの“瞬間移動魔法”も使えなくさせることが出来るのに……



その時、俺は、はっ!とした。


頭の中に、ある“一つの作戦”が浮かぶ。



…一か八かの賭けだけど…

エンプティを捕らえるためにはこれしかない…!



俺は、ぐっ!と拳を握りしめ

さらに攻撃を仕掛けようとするエンプティを睨みつけた。


そして

奴が俺に向かって腕を突き出した瞬間



俺は、フッ!と魔力を解いた。



「?!」



エンプティは一瞬動揺したが

険しい顔をしながら俺に向かって漆黒の矢を飛ばした。



「今さら戦意喪失?

魔力なしで僕に勝つつもりなら、兄さんはこの世で一番の阿呆だね!バカにも程があるよ!」



ドドドド!


地面に突き刺さる矢を紙一重でかわしていく。



奴が俺を仕留めるのが早いか

奴が俺の策に乗るのが早いか


…頼む、乗って来い…!



その時、地面に降り立ったエンプティが

ふっ、と距離を縮めるのが見えた。


魔力で強化した拳が俺に向かって迫り来る。



とっさに体を反転させて蹴りで応戦するが、エンプティは難なく俺の足を掴み

そのまま、ぶん!と、俺を投げ飛ばした。



ズサササッ!!



地面に倒れ込んだ俺に、エンプティが大きく言い放った。



「これで、終わりだ…!」



その瞬間

エンプティの瞳が鈍く輝いた。






かかった…!