「父を知っているんですか…!?」
彼の言葉に目を丸くして答えると、モートンさんはふっと微笑んで、優しい声で言った。
「僕は、かつて研究所でラドリーと共に働いていた仲間なんですよ。僕はラドリーよりも早く研究所を辞めてしまったんですが…」
そうだったんだ…!
私は胸がドキドキと鳴り出した。
まさか、お父さんの知り合いの方と出会えるなんて…。
すると、モートンさんは私に向かってゆっくりとした口調で言った。
「申し遅れました、僕はモートン。モートン、と気軽に呼んでください。今はこのログハウスで魔法の研究をする“はぐれ魔法学者”と言ったところです。どうぞよろしく」
長いふわふわの前髪から、優しげな瞳がのぞいている。
どこか不思議な雰囲気のある人だ。
その時、レイがログハウスの中へと足を踏み入れる。
「入るぞ。千歳草を貰ってさっさと帰る」
か、勝手に入っちゃっていいの…?
ズカズカと入っていくレイの後ろ姿を見つめながら、私はモートンに尋ねた。
「あの、レイとモートンはどういう関係なんですか?」
すると、モートンはレイを見ながら答える。
「僕は、レイ君の育ての親みたいなものです。レイ君が幼い頃ここに預けられてから、彼が酒場で暮らし始めるまでは、ここに一緒に住んでいました」
育ての親…?
つまり、ここは、レイの実家みたいなところらしい。
私はモートンの方を見ながら続けた。
「モートンは、レイの親と知り合いなんですか?」
すると、モートンは少し黙り込み、小さく呼吸をしながら答えた。
「僕は彼の親を知りません。レイ君はここに来る前、研究所で暮らしていたんです。ここにレイ君を連れてきたのはラドリーですよ」