闇喰いに魔法のキス




私が、痛みを覚悟して目をぎゅっと閉じた

その時だった。



「その子は、ギルの弱点なんかじゃないですよ。」



「『!!』」



辺りに、凛とした声が響いた。


私は、はっ!として目を開ける。



すると、酒場を取り囲むダウトたちの背後に

月明かりに照らされた一人の男性が見えた。



つい、見惚れるほど整った顔立ち。

髪は淡い茶色のオールバック。


強い光を宿した翠の瞳が私たちを真っ直ぐにとらえている。



…だ、誰…?



私が言葉を失って見つめていると

男性は黒マントたちに向かって言葉を続けた。



「彼女は、ギルの弱点ではなく“逆鱗”です。

触れたら最後、君たちはギルに跡形もなく消されますよ。」



『!!』



「…まぁ、その前に僕が倒しますけどね。」






と、低い声が聞こえた瞬間

男性の瞳が、パァッ!と輝いた。


ブワッ!!と、辺りに凄まじい強さの魔力が放たれる。






ギルと遜色ない魔力。

その場の空気が一変した。


黒マントたちは、一斉に顔色を変えて動揺しだす。



『ま、まずいぞ!一旦引け!』



私の腕を掴んでいた黒マントが、そう叫ぶと

酒場を囲んでいたダウトは一瞬で消え去った。



…まさか、瞬間移動魔法で逃げたの…?


よ、よかった。

助かった…!



私が、はぁっ!と、呼吸をして体の力を抜くと、ふっ、と魔力を消した男性がコツコツ、とこちらへ歩いてきた。


私の目の前で立ち止まった彼を見上げるが、整った顔立ちに見覚えはない。



…助けてくれたんだよね…?


私を知っているみたいだけど……

レイの知り合い…?



私が、ぱちぱちとまばたきをしていると

翠の瞳を細めた彼が口を開いた。



「ルミナさん、大丈夫ですか?

遅くなってすみません。」



軽く頭を下げる彼に、私は躊躇しながら尋ねる。



「え、えっと……。

どちら様ですか…?」



「…え?」



私がそう言った、次の瞬間

ふっ、と男性が笑い始めた。


くすくす、と笑う男性を、呆気にとられて見つめていると

彼は私に向かって口を開いた。



「僕ですよ、モートンです。」


「………えぇっ?!!」



一瞬固まった後、声を上げると

彼は前髪へ手を伸ばして一房下ろした。


くしゃっ、と少しいじると、見慣れたふわふわの長い髪になる。







はっ!として改めて男性を観察すると

彼は白衣を着ている。



え、えっ…?

本当に、モートン?!