ロディは、小さく唇を結んだ。


俺は少し声のトーンを落とす。



「本当、お前は…。

俺にはもったいない相棒だったん……」



俺がそう言いかけた、次の瞬間。

隣から鉄拳が飛んできた。


肩を軽く殴られる。



?!



俺が殴られた肩に手をやって、驚いて隣に視線を向けると

まっすぐ前を向いたまま、眉間にシワを寄せるロディの横顔が見えた。


車内に、ロディの低い声が響く。



「おい何だ、その“別れの言葉”的なヤツは。

レイ、お前、帰って来る気ないだろ…!」


「えっ!」



俺は一瞬動揺するが、ふっ、とミラー越しの視線を逸らして答える。



「いや、帰って来る気はすげーあるけど…

現実的に考えて、確率は低いっつーか…。」



「お前、一応ファンタジーのヒーローだろうが。弱音吐くなよ。

…ったく、最後までバカだな…!」



ロディの声が耳に届いた、その時

ロディが急に横を向いて、俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。



「お、おいっ!前見ろ、前っ!!」



俺が慌てて声を上げると

キキッ!と、ブレーキを踏んだロディが小さく呟いた。



「…本当に、バカだよ。お前は……。」



…!


少し震えているロディの声に、俺は顔を上げた。


すっ、とロディの手が俺から離れ

二人の視線が交わる。


ロディは、見たこともないくらい真剣な顔をしていた。


静かな車内に、ロディの声が響く。



「…確かに、俺は二年前、お前の情報屋になることに対して納得いってなかった。

五つも離れたガキの為に、大切なヤツと縁を切ってまで犯罪の片棒担ぎ続けるなんて、ごめんだと思ってた。」



ロディの瞳に熱が灯る。



「でも、今は違う。

俺はいつの間にか、お前の隣にいることが当たり前になってた。」






俺が目を見開いた瞬間

ロディは、ドサ、と背もたれに体を預けて、前を見つめながら言葉を続けた。



「今だから本音を言うけどな。本当は、このまま酒場に帰りたいんだ。

お前をみすみす死なせたくないし、お前をずっと嬢ちゃんの側に置いてやりたい。」



「!」



俺が小さく息を吸った時

ロディの掠れた声が耳に届いた。



「……俺も、未来が怖いんだよ。」