闇喰いに魔法のキス




レイの、戸惑うような息遣いが聞こえた。



…私はずるい。



こんなことして、レイが困るって分かってるのに。

こうすれば、レイが私を突き放せないって思ってる。


どうしても、レイに行って欲しくない。



「……ルミナ。」



…!



レイが、私の肩に、そっ、と手を置いた。


私がレイから体を離すと、至近距離でレイが私を見つめながら呟いた。



「…俺、今からお前に嘘をつく。」


「え……?」



私がつい聞き返すと、レイは真剣な表情で瞳の奥を揺らしながら続けた。



「今から言うことは俺の嘘だから、熱に浮かされたうわ言だと思ってくれていい。」



…レイ…?

何を………?



すると、レイは私の顔を覗き込んでまつ毛を伏せた。

そして、今まで聞いた中で一番優しく、甘い声で囁いた。




「……好きだ。

お前のこと…誰よりも、何よりも大切に想ってる。」








一瞬にして、世界が無音になる。


レイの声しか、耳に届かない。



「本当は、お前をここに置いて行きたくない

ずっとこのまま抱きしめて、離したくない」



どくん!!


一番大きく、胸が鳴った。


全身が熱くなって、驚きの息が漏れる。


私がレイから目を離せないで固まっていると

レイが、ふっ、と優しく微笑みながら呟いた



「……なんてな。」






二度目のレイの笑顔。


また見たいってずっと思ってきたけど

こんな時、なんて。


もう、何なの、この人は。


私を、どこまで好きにさせたら気がすむんだろう?


レイは、胸のつかえが全てなくなったような顔をして呟いた。



「嘘つくにしても、らしくないこと言っちまった。

あー、恥ずかし……。」



私は、それを聞いて、はっ、とする。



「…今のは…う、嘘……?」



「…うん、嘘。」



「…本当は…?」



「嘘だって。…じゃねぇと、お前を残していけない。」



…!



その時、レイの瞳が微かに揺らめいた。


言葉とは裏腹に、レイの視線に込められた熱が私の心を溶かす。


レイが、私を見つめながら囁いた。



「…嘘だから。

俺を待ってなんかなくていいよ。」