う……

嘘…だよね……?



体が、カタカタと震える。

頭の中が、真っ白になった。


いくら見つめても、レイの手には小瓶から外されたフタがある。



…小瓶が……開いた……?



レイは、そんな私の動揺には気づかず

私に小瓶を差し出した。



「ほらよ、開いたぞ。

ルミナ。お前、握力グリップで鍛えてたんじゃねぇのかよ?」



私は、レイの顔を直視出来ない。


レイから小瓶を受け取るが

指に力が入らず、小瓶は私の手から滑り落ちた。



パリーン!



「「!」」



レイとロディは、目を見開く。


私は、何も言葉が出てこない。


床に散らばった小瓶の破片を拾うことも出来なかった。



「おい、ルミナ!

何、ぼーっ、としてんだ。」



レイが、眉間にシワを寄せて低い声でそう言った。


私は、そんなレイに返事をすることが出来ない。



「…ルミナ?」


「嬢ちゃん…?」



私の異変に気がついた二人は、さっ、と表情を変えて小さく私の名を呼んだ。


レイが私の側にしゃがみ込む。



「どうした?ルミナ。」



綺麗な碧色の瞳が、私を見上げた。


不安げで、真剣な表情。



いつも、冷たく睨んでばかりのくせに

いつも、低い声で意地悪言うくせに


どうして、今………

そんな顔、するの……?



レイの顔を見た瞬間

ぽろ…、と涙がこぼれた。



二人は、はっ、と息を呑む。



私は、レイの瞳から目が離せない。



…そうだ…。


レイは、冷たいだけじゃない。


本当はすごく優しい人だって、私は知ってる。


いつもいつも、私の側にいてくれた。


どんな時も、私を助けに来てくれた。



だって、レイは……本当は………





「………ギル……。」



「「!!」」




ぽろ、と私の口から出たその名前に

私を見上げるレイが目を見開いた。


その瞬間、私の胸に想いが溢れる。



「っ……!」



私は離れに向かって駆け出した。


これ以上、レイの顔を見ていられなかった。


ここにいたら、自分が何を言い出すのか分からない。



「…っ、おい、ルミナ!待て!!」



私は、足を止めることはない。


まっすぐ離れに向かってギシギシと階段を上る。



バタン!



自分の部屋の扉を閉めた瞬間

堪えていた涙が、ぶわっ!と溢れた。


嗚咽が漏れ、私の頬が濡れていく。



レイだ。

レイだったんだ。


いつも隣にいてくれて、私をずっと影で守り続けてくれていた“ギル”は……



「……レ…イ……っ…」



私は、ずるずると扉にもたれ掛かって座り込んだ。


…泣いて逃げ出すなんて、最低だ…。

私は…弱い。



レイと向き合う勇気が出ないまま

静かな部屋に私の呼吸と時計の針の音だけが響いていた。