…っ!


頭の中が、真っ白になった。


今までルオンが言ってきた言葉の意味が、全て繋がって線となる。



“僕は、魔法使いを消しているから”



“僕の育った所には、古代の魔法書が僕の身長をはるかに超える高さまで積み上げられるほど、たくさんあったからね。”



“…僕の周り、大人しかいなかったからさ。

友達とか、出来たことなかったんだ。”



“大…丈夫、これは、軽いリバウンド…。

慣れてるから…、心配しないで…。”



繋がった先に見えてきたものは、深い悲しみと孤独だった。


ルオンは、魔法使いを憎んでいる。


それは、実験対象にされた過去があったからなんだ。



“…僕がもし喰うとしたら、獲物は“闇”じゃない。“魔法使い”さ。

僕は、敵だと思ったら誰にでも牙を向ける。…たとえ、それが“光”でもね。”



ルオンの言葉が、頭の中に浮かんでは消える。


…ルオンは、どんな気持ちで生きてきたんだろう。


誰も助けてくれる人がいなくて、禁忌に手を出さなければそこから逃げ出すことが出来なかった。


ルオンが闇に身を落としたのは、まるでそれが運命であったかのようだ。


リバウンドを受けることしか選びとれなかったルオン。


どれだけの痛みを抱えてるのか、私には想像も出来ない。



…ただ…。

心を閉ざして憎しみに支配されている今のルオンは、いつか壊れてしまうってことだけは分かる。



モートンは小さく息を吐くと、すっ、と隣から立ち上がった。

そして、私の方を見て諭すように言った。



「ルミナさんの中からシンが消えたとはいえダウトのボスと関わるのは危険です。

…レイ君には、きっと考えがあります。今はレイ君を信じて、言うことを聞いてあげて下さい。」



…!


私は、頷くことしか出来なかった。


モートンはそれを見て小さく微笑むと

ぽん、と優しく私を撫でて歩いて行ってしまった。



…レイと、ルオンの過去…。


レイは、私が弱っている時に全てを包み込んでくれた。


私も、力になりたいって思ったけど…

私が軽々しく踏みこめることじゃない。



私は、すっ、とベンチから立ち上がって歩き出した。


その足はまっすぐ酒場に向かっている。



…今は、モートンの言う通りレイを信じて、酒場の仕事に集中しよう。



コツコツ…、と大通りを抜け、酒場の裏道へと入った

その時だった。



ビュゥゥウッ!!



「!」



細い裏道に、激しい風が吹き抜けた。



な、何…?!



とっさに顔を腕で覆い、壁に体を預けて耐えると

ふっ、と近くに人の気配がした。



私が、小さく呼吸をして目を開けた瞬間

そこにいたのは、黄金の髪の少年だった。