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「レイ!どこまで行くの…?!」



手を引かれて歩くこと数分。


裏道を抜け、市場を通り過ぎ、大通りまで来た時

レイは、ぱっ!と私の腕を離した。


無言で歩き続けていたレイが、ふいに私の方を振り向く。


その瞳はとても鋭く、どこかイライラしているような気がした。


じっ、とレイを見つめていると

彼は私を見つめ返して口を開いた。



「ルミナ。もうあいつとは会うな。」


「えっ…?」



突然の言葉に、私はつい声を出す。


驚いたまま固まっていると、レイは不機嫌そうな顔のまま言葉を続けた。



「あいつ以外の奴なら、誰とでも友達になっていい。

だけどな、あいつはダメだ。」



「ど、どうして……?

ルオンは、すごくいい人なのに……」



私が、おろおろしながら答えていると

レイが、ギン!と鋭い目つきで私を睨んで言い放った。



「あいつのどこが“いい人”なんだ…!猫かぶってるだけだ。騙されるな。

いいから、俺の言うことを聞け。」



…!


レイは、それだけ言い残すと

私に背を向けてスタスタと歩き出す。



…どうしてそこまで悪く言うんだろう?


相当仲が悪いみたいだったけど

実の兄弟なのに……。



その時、レイの足がぴたり、と止まった。


私が、はっ、とした瞬間

すごい勢いでレイがUターンしてくる。


つい、身構えてレイを見上げると

レイは真剣な表情で私の前で立ち止まった。



「…な、何……?」



私が恐る恐る尋ねると

レイは私から目を逸らしながら小声で呟いた。



「…さっき、“あいつ以外なら誰でも友達になっていい”って言ったけど、訂正する。

まぁ、これは俺の持論だけど。…男女の友情は成立しないから。覚えとけ。」



「え?」



レイは、それだけ言うと、きびすを返して歩いて行ってしまった。


…な、何…?


今、私は遠回しに、“友達にするなら女の子にしとけ”って言われたんだよね?


…レイ、どういうつもりで言ったのかな…?



私は、遠ざかるレイの背中を見つめた。



…もしかして、ヤキモチ?

いや、レイに限って、それはないよね。


ルオンに対しての態度も、複雑な事情があるような印象を受けた。


…レイとルオンの間には、何があったの…?


私は、レイのことを何にも知らない。


心に、少しモヤがかかったような気がした。


…レイのことをもっと知りたい。

レイの考えていることが分かるくらい。


レイは、いつまで経っても私に一線を引いているような気がする。


もっとレイの心に近づきたいって思うのは、悪いことなのかな…。



その時

私の肩を、ぽん、と誰かが叩いた。






驚いて振り向くと、そこには見覚えのあるふわふわの髪の毛の男性が立っていた。



「やぁ、ルミナさん。久しぶりですね。」



「!モートン…!」